研究課題
細胞外に分布する細胞外マトリックスは、時と場合に応じて免疫細胞の障壁として、足場として、またシグナル伝達の場として機能する。炎症や敗血症などの病態の場における免疫細胞の動態を、細胞とこれを取り囲む細胞外マトリックスの変化に着目して解析し、炎症抑制方法を探索することを目的に本研究を遂行した。マスト細胞の分泌顆粒内に蓄積する硫酸化糖鎖ヘパリンは顆粒内の生理活性物質の蓄積に必須であることが既に示されている。ヘパリンは硫酸化糖鎖切断酵素ヘパラナーゼにより顆粒内で低分子化されるが、これがマスト細胞の機能制御においてどのような役割を果たすかについては全く分かっていなかった。研究担当者は細胞外マトリックスの中における生理活性物質の挙動という全く新しい視点からこの問題にとりくみ、ヘパリン低分子化が、ヘパリン自体のみならず、ヘパリンに相互作用する酵素キマーゼのマトリックス内の拡散効率を調節していることを3次元細胞培養系、再構成系を用いた解析により明らかにした。さらにこの調節が培養細胞株のみならずマウス個体由来のマスト細胞でも生じることを、腹腔に存在するマスト細胞前駆細胞を培養してマスト細胞を誘導する系を確立することにより見出した。この成果はBiochemical Journal誌を始めとする論文として掲載された。敗血症モデル動物においてヘパラナーゼは血液中に放出されること、基底膜と細胞表面のヘパラン硫酸の切断により、炎症細胞の挙動を調節することが考えられた。敗血症におけるヘパラナーゼの関与を検討した。このモデル系で、敗血症発症時にTNFαに遅れてヘパラナーゼ血中濃度が増加することを見出した。ヘパラナーゼ中和抗体の作成には至らなかったため、低分子阻害物質・捕捉抗体の投与により、敗血症の症状の改善が見られるかどうかを検討したが、抑制効果は観察されなかった。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biochemical Journal
巻: 458 ページ: 291-299
J Glycomics Lipidomics
巻: S1 ページ: 003(ページ指定なし)