研究課題
本研究は、難治性感染症である住血吸虫症とマラリアの寄生虫感染症に有効な広範囲治療薬の開発と標的分子を見出すことを目的としている。平成24年度は以下の研究成果を得た。(1) マンソン住血吸虫の凍結切片に Rhodamine 付加体 N-89 を作用させ、局在の観察を行なった。Rhodamine 付加体 N-89 は住血吸虫体内の核(DAPI)及びミトコンドリア(MitoTracker Red)とは共局在しないが、特異的に局在する部位があることを明らかにした。また、薬剤作用時間に依存して Rhodamine 付加体 N-89 が濃縮される結果を得た。現在、局在部位を明らかにするため、解析を行っている。(2) ビオチン付加体 N-89 を用いて、N-89 の標的タンパク質を同定するためのプロテオミクスの研究基盤を検討した。現在までに住血吸虫における N-89 の標的タンパク質は同定出来ていないが、今後明らかにしたい。(3) 物理的破壊によるマンソン住血吸虫のシストソミューラ培養液に N-89、あるいは N-251 を直接処理したところ、濃度依存的にセルカリアの成長阻害と運動性の低下が見られた。両化合物のうち、N-251 の方が N-89 より阻害能が強く、特に、シストソミューラの運動性に与える影響が大きいことが判った。現在、マンソン住血吸虫の運動性に関わる因子の網羅的な比較解析を行っている。(4) 培養熱帯熱マラリア原虫の標的分子の探索研究では、大量の培養液とそれに付随する不純物(赤血球由来)の除去法がネックとなっている。これら問題点を解決するためにローデントマラリア原虫感染マウス実験系(P. chabaudi 感染 ICR マウス)で、高収率のリング、及びトロポゾイトステージの原虫を集められるモデル系を構築し、上記の化合物の標的分子の解析に応用できるかどうかを現在検討している。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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