研究課題/領域番号 |
22390025
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
武田 厚司 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (90145714)
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キーワード | 亜鉛 / 海馬 / 記憶 / 長期増強 / ストレス / グルタミン酸作動性神経 |
研究概要 |
亜鉛は脳機能に不可欠であり、亜鉛イオンとして機能するものが神経細胞のシナプス小胞内に高濃度で存在する(約300μMとの報告があるが、その化学形態は不明)。亜鉛イオンは神経活動に伴いシナプス間隙に放出され、ダイナミックに脳機能を調節する。この神経はグルタミン酸作動性神経のサブタイプで亜鉛作動性神経とも呼ばれている。亜鉛作動性神経は学習・記憶ならびに精神活動に重要な役割を担うと考えられるが、その役割は十分には明らかにされていない。学習記憶を司る海馬では、貫通線維シナプス、苔状線維シナプス、シャーファー側枝シナプスの三シナプスで情報が処理されるが、いずれも亜鉛作動性神経を含む。苔状線維はすべて亜鉛作動性である。亜鉛作動性神経終末からグルタミン酸とともに放出される亜鉛イオンは、グルタミン酸受容体活性化により、カルシウムチャネルを介してカルシウムイオンとともに速やかにシナプス前神経とシナプス後神経に取込まれる。 亜鉛シグナルはカルシウムチャネルなどを介してカルシウムシグナルとクロストークし、シナプス神経伝達に関与することを示した。そして、記憶の細胞レベルでのメカニズムの一つと考えられている長期増強(long-term potentiation:LTP)は、海馬三シナプスにおいて亜鉛イオンにより多様に調節されることを示した。さらに、海馬依存性の物体・空間認識記憶に海馬シナプス亜鉛イオンが関与することを示した。しかし、シナプス亜鉛イオンのホメオスタシスがストレスなどにより崩壊すると、LTPが減弱し、記憶障害が惹起されることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海馬歯状回において、シナプス亜鉛イオンが一過性に減少すると、記憶の獲得・想起が障害されるばかりか、獲得した記憶の想起が障害されることも明らかとなり(投稿論文作成中)、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
記憶の獲得・想起におけるシナプス亜鉛イオンの分子レベルでの作用メカニズムを、覚醒下での長期増強.(LTP)の発現と維持を指標、リアルタイムで学習・記憶と関連させて解析する。
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