機能未知なトランスポーターであるオーファントランスポーター、特に、オーファン薬物トランスポーターのin vivoにおける機能を明らかにすることは、薬物相互作用などの薬物動態やドラッグデリバリーにおける新たな知見と戦略を与えるため重要である。本研究は、標的プロテオミクスと標的メタボロミクスの融合によりオーファン薬物トランスポーターの機能同定の新規戦略を構築することを目的とする。平成22年度は、独自の定量的プロテオミクス技術を応用し薬物に関連するトランスポーター、及びそれらと同じファミリーに属するトランスポーターに対する同定システムをin silicoで構築し、ヒト脳毛細血管内皮細胞、肝臓を対象に解析した結果、これら組織に有意な発現量で発現する複数の機能未知であるオーファントランスポーターを同定した。同定したオーファントランスポーターの遺伝子をクローニングし発現細胞を作成し、細胞膜における発現量を明らかにした。また、質量分析による標的メタボロミクスの手法を用いて非標識化合物を用いた発現細胞への取り込みによる基質スクリーニングを行った。さらに網羅的メタボロミクスの解析法を用いてオーファントランスポーター発現細胞と陽発現細胞のメタボロームの比較を行い、複数の基質候補化合物を同定した。今後、これらの候補化合物を中心に詳細に輸送解析を行うことによってオーファントランスポーターの機能が明らかになると考えられる。
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