1)透析患者におけるマルチキナーゼ阻害剤ソラフェニブの血中濃度解析 透析施行腎がん患者に対してソラフェニブが投与された。透析患者におけるソラフェニブの血中濃度解析は報告がなかった。ソラフェニブ200mg/日で開始し、8日目に400mg/日、23日目に800mg/日(通常量)(day 1)へと漸増していき、血中濃度解析(day 9とday 183)と副作用モニタリングによってその妥当性を評価した。その結果、6ヶ月の服用中、重篤な副作用は認められず、また血中濃度も治験等で報告されている非透析患者の血中濃度のばらつきの範囲内であった。1例の症例であるが、血液透析患者へのソラフェニブの投与は、非透析患者と同様に実施できることが示唆された。 2)マルチキナーゼ阻害剤スニチニブのPK/PD/PGx解析 スニチニブも腎がんの治療薬であるが、好中球減少症や血小板減少症などの副作用が高頻度で発現するため、標準投与量での治療継続が困難となる症例が多い。スニチニブ治療開始早期に様々な副作用を呈した患者の血中濃度を測定し、他の患者の血中濃度プロファイルと比較したところ、スニチニブのAUC_<0-24>は約2.5倍大きかった。また、in vitroの輸送実験から、スニチニブは薬物排出ポンプABCG2(BCRP)の基質になることが判明した。そこで、早期に副作用が発現した患者の遺伝子多型を解析したところ、ABCG2 421C>Aのホモ型であった。従って、ABCG2 421C>Aの遺伝子多型は、スニチニブの曝露量増加と関連していることが示唆された。
|