研究課題
本研究は、発生肝臓の構成組織のうち、血管の構成細胞群(類洞内皮細胞、星細胞)の発生に関与することが鳥類胚で予想されたTGF-βとFGF関連遺伝子群のマウス胚を用いた機能解析を目的とする。そのために以下の計画を遂行する予定であった。(1)TGF-β/FGFリガンド群のマウス胚肝臓における発現解析(2/3)TGF-β/FGF経路が血管発生に関与することを証明するために、Cre driver mice(Flkl-CreまたはWT1-Cre)とALK5(flox/flox)またはFGFR1(flox/flox);FGFR2(flox/flox)miceを交配し血管内皮特異的/中皮特異的にTGF-β/FGF経路を遮断した際の表現型を解析する。(4)肝血管内皮特異的にTGF-β/FGF経路を遮断するために、Stabilin2 Credriver miceを作製し(2/3)と同様の解析を行う。平成23年度は特異抗体を用いた二重蛍光免疫染色により、TGF-β1/2はE10.5の肝上皮とE11.5の肝中皮を含む中胚葉性組織で主に発現し、TGF-β3はE11.5肝中皮で特異的に発現することを見いだした。これらの結果は、胚性肝臓におけるTGF-β群の分布様式が種によって異なること、また発生段階によっても大きく変化することを示している。この発現様式の変化は細胞生物学/発生学的視点から興味深く、研究目的を血管発生から肝上皮へも広げるべきであるという考えに至った。
4: 遅れている
研究計画が遅れた理由は、以下に示す4点があげられる。(1)雇用していた実験補助員が年度半ばで休職しそのかわりとなる補助員の養成に6ヶ月がかかったこと。(2)遺伝子工学に必須な解析ソフトウェア(Vector NTI Advanced 11.5)がき,ちんと機能せず、Invitrogenの対応の遅れによりその回復に4ヶ月かかったこと。(3)申請者本人がBACクローンの扱い(BACDNAの抽出、制限酵素マッピング)に習熟しておらず、実験補助員の代替を直ちにおこなうことができなかったこと。(4)targeting vectorをBACへ組込むために当初使用していたRed/ETsystemがうまく機能せず、代替法としてのRecombineerin法の導入に時間がかかったこと。
研究の推進方策として、より効率的な研究資源の運用を行う。具体的には以下の3点について改善を行う。(1)スケジューリングの改善:研究補助員は主にパートタイマーであり、一日のうちで実際に実験ができる時間帯は限られている。そこで週はじめに一週間分の予定表を作成し無駄な時間が生じないように工夫する。(2)プロトコルの改善:練度があまり高くない実験補助員を雇用して実験を遂行するには、自分用の簡略化したプロトコルでは不十分でありミスを誘発する。そこで低練度の実験者でも確実に実験が遂行できるように、その水準にあったプロトコルを作成する。(3)培地の備蓄量の増大:遺伝子工学を予定通り遂行するためには、大腸菌培養肘の培地等を常にあらかじめ準備しておく必要がある。これまでもある程度は備蓄していたが予定外の実験には対応できないことが何度かあった。そこで備蓄量をこれまでの二倍にし定期的に更新することにする。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Developmental Biology
巻: 363 ページ: 15-26
Doi:10.1016/j.ydbio.2011.12.015
PLOS ONE
巻: 6 ページ: e27676
doi:10.1371/journal.pone.0027676
http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/divisions/pattern_formation/