研究概要 |
HCV/HBVキャリアが200万人を越える日本人の肝硬変/肝細胞ガンの発生率は今後急上昇することが確実である。従って、肝臓の再生医療の基盤となる肝臓の組織発生過程を理解することは、科学的社会的に極めて重要である。しかしこの肝組織発生に必須である肝血管の「血管由来因子」とその「発生機構」の研究はこれまでほとんど行われていなかった。(成果)我々は、前者がNeurturinとWnt9aであることを世界に先駆けて明らかにした。(着想の経緯)残された重要課題である「肝血管の発生機構」に関して、その制御因子の有力候補(FGF18, TGF-beta2,3)が肝中皮で発現していることを我々は既に見いだしている。(目標)そこで本研究計画では、これらの候補遺伝子群のシグナル伝達を阻害、異所性誘導させることで、肝血管を構成する細胞群におけるシグナルの作用点を明らかにする。 (実績) 肝組織発生におけるTGF-beta シグナリング経路の機能を明らかにするために、これまでにCre-driverとして、WT1-EGFPCre(胚性中皮特異的Cre driver), WT1-CreERT2 (前項の誘導型)、Tek-Cre (血管内皮細胞特異的Cre driver)の購入と繁殖、さらにFoxA2-GFP-CreER (内胚葉特異的誘導型Cre driver)の繁殖を行った。 またTGF-beta receptorのdominant negative formによるTGF-beta signalingの阻害とその細胞追跡を同時に行うためのeffector/receptor mouseとしてAi9-hALK5-KR-AT2 (略称 KRAT2)を、TGF-beta receptorのconstitutively active formによるTGF-beta signalingの異所性誘導とその細胞追跡を同時に行うためのeffector/receptor mouseとしてAi9-hALK5-TD-AT2 (略称 TDAT2)を、さらにコントロールとしてTGF-beta signalingに影響することなく細胞追跡のみをおこなうためtandem Tomatoを発現するように設計したreporter mouseとしてAi9-3tTom (略称3tTom)を作製した。
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