「研究目的」 私たちの開発したタンパク質導入法は、11個のアルギニン(11R)からなるペプチドを目的のタンパク質に融合する事により、すべての細胞へin vivo導入できる方法です。ウイルスと違い、タンパク質を直接細胞内に導入するためDNA損傷による癌化などの副作用がなく、iPS細胞作製や幹細胞分化技術への応用が急速に広まっています。この11Rペプチドは、全ての細胞に導入されるため、目的の細胞にのみ選択的に導入可能な技術を長年にわたり研究し、その開発に成功しました。本研究は"細胞選択的な導入システム"の確立による先進医療のための基盤技術を提供すことを目的としています。 「本年度成果」 ランダムペプチドライブラリーからの細胞選択的導入能を発揮する導入ベプチドの分離を行いました。先行研究で、15残基ランダムアミノ酸配列をコードするペプチドライブラリー群に対して、正常繊維芽細胞、癌などの疾患関連細胞株を用いた細胞導入アッセイによるスクリーニングを行い、従来汎用されているTATや11Rなどに比較して、より選択性を持った細胞内導入を発揮するPTDペプチドを分離・同定できました。このスクリーニング法をグリオブラストーマなどの難治性癌にも適応拡大し、選択的導入ペプチドの候補を発見しました。また、既に発見している大腸癌、白血病などの腫瘍に特異的に導入できるペプチドを用いた、モデルマウスでの癌治療やイメージングにも成功しています。
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