研究概要 |
本研究課題は、伝統的な生理学的思考を基盤に、Computational Cell Biologyの数学的手法を包括的心筋細胞モデルと新たに作成した膵臓β細胞モデルに適用し、細胞機能動作原理と各機能分子の役割を明らかにすることを目的としている。特に、ポストゲノムの時代にあって、分子機能を統合して細胞機能の成り立ちを総合的に理解し、医学生物学・医療に役立てることが緊急の課題である。本来、生理学は生体機能を総合的に観察することから始めて、その背景にあるメカニズムの解明を目指してきたが、究極は膜興奮や筋収縮研究に見られるように、研究成果を定量的な数学モデルにまとめることにある。私たちは、膜興奮のみでなく筋収縮とそれを支える細胞内メカニズム、エネルギー代謝やシグナル伝達を総合的に組み込んだ心筋細胞モデルを発表してきた(Takeuchi et al., J Gen Physiol 128 : 495-507 2007)。この経験を生かして、最近では膵臓β細胞モデルを開発してきたが、この研究に進捗があり、この細胞モデルのバージョン1といえるものが完成した。そこで、これらの細胞の動作原理を分子メカニズムに基盤を於いて解明する目的で、Computational Cell Biologyの数学的手法を包括的細胞モデルに適用した。すなわち、bifurcation analysisと我々の開発したLead potential analysis (Chaetal., 2009, Biophysical Journal 2009)それに、従来のI-V曲線解析を合わせて、この細胞モデルの機能メカニズムを解析した。成果を、まとめて、国際学会で発表するとともに、最近2編の論文を完成し、投稿した。その結果、再校正すれば受理される段階にこぎつけた。
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