研究課題
1.胎仔大脳皮質のGABAシステム発達過程の解析:放出されたGABAの酵素反応法によるイメージングで、細胞外GABAが辺縁帯、中間帯下部-脳室下帯上部で多く、傍分泌的に容積感受性陰イオンチャネルから放出されることを証明した。2.拘束ストレスとタウリン欠乏の相互作用の評価:これまで報告されている母体ストレスによる出生仔の行動学的異常の背景に、胎仔脳内のタウリン含量の変化による神経回路の発達異常がある可能性がある。そこでまず、拘束ストレス時の胎仔脳内タウリン含有量をHPLC法を用いて検討した結果、有意差はないが減少傾向はあった。今回の方法では細胞内外の区別がつかず、環流法の必要性が示された。タウリンは胎仔期にはKCC2蛋白のリン酸化を介して機能を抑制しているが、生後すみやかに抑制が解除されることを証明した。これはタウリン含量の発達変化と必ずしも矛盾しないが、その他の因子(例:リン酸化酵素)の関与も示唆された。3.遺伝的ストレス(GAD67ヘテロ欠損)の影響:遺伝的要因(GAD67ヘテロ欠損)と環境的要因の相互作用については、野生型のメスとヘテロ型の雄の交配に加えて、ヘテロ型のメスと野生型のオスを交配して得られる妊娠マウスを拘束ストレスにさらす実験を行った。ストレスに対する応答(コルチコステロン量)を母仔双方で遺伝型で比較した結果、GAD67ヘテロ欠損は母体においては妊娠そのものもストレスとなっており、拘束ストレスへの応答も上昇していた。ヘテロ欠損母体の胎仔は野生型でも成長は有意に低下した。野生型母胎におけるヘテロ欠損胎仔のストレス脆弱性も野生型より高く、特に胎盤のコルチコステロン不活化作用の低下が示唆された。また、胎仔期ストレスによるGABA細胞減少は生後も持続していた。
2: おおむね順調に進展している
前年度、今年度ともに当初の計画を実行でき、実験数も増えて結果が信頼できるものとなってきた。母体への拘束ストレスという環境的ストレスとGAD67ヘテロ欠損という遺伝的要因の交互作用が、胎仔脳GABAシステムの発達異常をきたすことがほぼ明らかとなり、その結果として脳の発達に影響を与える可能性が強く示唆された。
環境的ストレスのみならずGAD67ヘテロ欠損が母仔双方においてストレス脆弱性を高めることが明らかとなったので、今後はその交互作用に着目し、得られたモデルでこれまで以上に詳細な検討を行う。特に、生後発達がどのように変化するかを、生理学、細胞組織的に解析し、行動学的な異常も検討していく。
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