研究課題
飲水と摂食行動が密接に関連していることは経験的に理解できるが、その分子基盤の詳細は不明である。そこで、本研究では、飲水・摂食行動の具体的な分子基盤を解明することを目的としている。初年度は、浸透圧センサーとして注目されているTRPV1およびTRPV4をノックアウトしたマウスを用いて飲水量や摂食量等の基礎データを集積した。そのデータをもとに、本年度(2年目)は、TRPV1ノックアウトマウス、TRPV4ノックアウトマウスおよびそれぞれの野生型マウスの浸透圧感受性について検討した。具体的には、マウスの腹腔内に9%高張食塩水を投与し、脳内の浸透圧感受性部位(脳弓下器官、終板器官、室傍核、視索上核)でのFosタンパクの発現動態を免疫組織化学的染色法により比較検討した。浸透圧刺激のコントロールには0.9%生理食塩水を投与した。その結果、TRPV1およびTRPV4ノックアウトマウスとそれぞれの野生型マウスの脳内浸透圧感受性部位(脳弓下器官、終板器官、室傍核、視索上核)におけるFosタンパクの発現は、コントロールに比べて9%高張食塩水を投与後に著明に増加したが、TRPV1およびTRPV4ノックアウトマウスとそれぞれの野生型マウスとの間では明らかな差異は見られなかった。なお、TRPV1ノックアウトマウスではTRPV1アゴニスト(カプサイシン)に対する疼痛反応がほとんど見られず、TRPV4ノックアウトマウスではTRPV4アゴニスト(4αPDD)の皮下投与による浮腫形成はほとんど見られなかった。今後、更なる検討が必要である。
2: おおむね順調に進展している
飲水・摂食行動の具体的な分子基盤としてTRPチャネルに着目し、TRPV1およびTRPV4ノックアウトマウスの飲水・摂食行動に関連する因子(今年度は浸透圧感受性)について検討し、種々のデータが集積しつつある。
今後もTRPV1およびTRPV4ノックアウトマウスを用いて飲水・摂食関連の機能解析を進め、更に高血圧等の病態においても検討する。なお、来年度は、本研究課題の最終年度を迎えるため、これまでの研究データをまとめつつ今後の展望についても検討する。
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