研究課題/領域番号 |
22390046
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山田 清文 名古屋大学, 医学部附属病院, 教授 (30303639)
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研究分担者 |
溝口 博之 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (70402568)
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キーワード | IFITM3 / 神経発達障害 / 統合失調症 / アストログリア細胞 / polyI:C / 動物モデル / 炎症性サイトカイン / D-セリン |
研究概要 |
妊婦のウイルス感染は胎児の脳・神経発達に影響して統合失調症の発症リスクを高めるが、その分子機構はほとんどわかっていない。本研究の目的は、新生仔期の合成二本鎖ポリヌクレオチド(polyI:C)処置により誘発されるマウスの神経発達障害におけるインターフェロン誘導性膜タンパク質(IFITM3)の役割を解明することである。平成22年度は次の4項目について検討した。 1. IFITM3のインビトロ機能解析:PolyI:C処置したアストログリア細胞から産生されるグリア因子(polyI:C-ACM)の処置によりマウス海馬由来の初代培養神経細胞の軸索、樹状突起およびスパインの形成が抑制された。一方、polyI:C-KOマウス由来グリア細胞のpolyI:C-ACMには神経発達阻害作用は認めらなかった。 2. IFITM3-KOマウスの行動薬理学的解析:PolyI:C処置マウスでは新奇物体認知記憶試験において障害が認められたが、IFITM-3-KOマウスにpolyI:C処置をしても認知記憶障害は誘発されなかった。 3. IFITM3-KOマウスの神経化学的解析:PolyI:C処置マウスの前頭葉皮質において神経細胞の樹状突起マーカーであるMAP2タンパクの発現低下が認められたが、IFITM-3-KOマウスにpolyI:C処置してもMAP2の減少は認められなかった。 4. 神経発達障害仮説に基づく新しい抗精神病薬の創薬:PolyI:C処置モデルマウスの統合失調症様行動障害は、ハロペリドール、クロザピン、D-セリンにより改善した。 以上の結果より、polyI:C神経発達障害にはアストログリア細胞に誘導されるIFITM3が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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