研究課題/領域番号 |
22390047
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
日比野 浩 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70314317)
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キーワード | 内耳 / 蝸牛 / 内リンパ液 / 物性 / 組成 / イオン / 難聴 |
研究概要 |
難聴・目眩を伴う突発性難聴・メニエール病や、老人性難聴等の内耳疾患は、耳科領域では比較的多いが、その病因は殆ど不明である。これらの一部の治療には、ステロイド等の古典的薬物が用いられるが、無効の場合が多く、効果的な治療法の開発が待ち望まれる。申請者は、上記の疾患が、内耳を満たす粘稠な細胞外液「内リンパ液」の物性や成分の異常に立脚するという仮説をたて、まず、(1)高粘稠性に注目した、内リンパ液の物性の、聴覚に対する生理的意義の理解を目指す。次に、(2)蛋白質・脂質を中心とした内リンパ液成分の同定と、その内耳機能での役割の解析を行う。更に、(3)内リンパ液の物性や成分の破綻に基づく疾患の探索を進め、最終的に(4)内耳疾患に対する新しい治療法の開発に繋げる。多面的な実験手法に加えて、計算科学も駆使して定量的な解析を行い、統合的に研究を推進する。本年度は、引き続き、動物の内リンパ液を採取するための方法の開発に尽力した。内リンパ液は粘性が高く採取困難が予想されたため、外リンパ液を題材として、微小ガラス管による液体抽出を試した。1連管電極の口径の大きさを調整することで、ある程度の量の外リンパ液を得た。内リンパ液の採取を行う予定である。また、(3)の計画において、内リンパ液の成分が判明した際に、それらが内リンパ腔に面するイオン輸送体に与える影響についての研究を予定しているが、その実験系がほぼ完了した。即ち、丸ごとの血管条をそのまま単離し、内リンパ腔側の膜にパッチクランプを施行する方法である。これにより、イオン輸送体素子を、in vivoに近い形で解析できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
内リンパ腔は狭小で、その中の内リンパ液は少なく且つ粘性が高いため、解析に十分量の内リンパ液が採取できず、それが計画を遅らす理由となっている。
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今後の研究の推進方策 |
11で述べた問題点は残っているが、外リンパ液を題材とした試験的実験において方法論の進展も見られているので、それを更に発展させて行きたい。また、+80mVと高い電位をモニターすることで内リンパ腔を正確に同定する方法は既に前年度までに確立しているので、開発中の液体採取法と組み合わせれば、純度が高い内リンパ液が採取可能であると考えている。また、少量の内リンパ液の粘度の測定に従来法が不適切であれば、異分野の研究者と連携して新たな測定装置の開発にも着手したい。
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