研究課題
心筋細胞内の筋小胞体Ca^<2+>輸送のみを促進するような薬物は、細胞外からのCa^<2+>流入増加を伴わず、弛緩が十分に達成されることから収縮力を増強する理想的な強心薬となり得る。本研究は、筋小胞体Ca^<2+>輸送の調節蛋白質であるホスホランバンに特異的に結合する一本鎖オリゴヌクレオチド(アプタマー)を利用した新たな心不全治療薬を開発することを目的としている。これまでにSELEX法で得たホスホランバンに結合するホスホロチオネート化したRNAアプタマー約20種類のうちホスホランバン1アプタマ-Apt-30について、新たな心不全治療薬として利用可能なものにするために以下の検討を行った。まず、血中での安定性について、以前の検討で得ているDNAアプタマーであるApt-9が約6時間で分解されてしまうのに対し、Apt-30は血中で24時間後でも分解は見られず、高い血中安定性を示した。心筋小胞体のCa^<2+>輸送促進作用に関しては、Apt-30がnMオーダーの極めて低い濃度で心筋小胞体Ca^<2+>輸送ATPaseを活性化することが明らかになった。これは、Apt-9よりも約100倍、昨年度に検討したApt-19よりも約10倍の効力を持つことを意味する。さらに、このApt-30を用いてラット成獣の単離心筋細胞での効果を検討した。ナノ粒子を利用した細胞内導入法でApt-3Qを導入し、心筋細胞内Ca^<2+>・収縮性同時測定システムを用いて心筋の収縮・弛緩およびFura2による細胞内Ca^<2+>濃度変化を測定した結果、Apt-30で弛緩の促進と収縮力の増強作用があることが確認された。これらの結果は、さらに細胞内導入法の最適化を図る必要はあるものの新たな心不全治療薬として利用可能であることを示す。
2: おおむね順調に進展している
血中安定性と極めて低濃度で作用するホスホランバン・アプタマーを開発したことにより、細胞レベルでの効果が確認でき臓器レペルへの検討に移行することが出来、概ね順調に進んでいる。ボスホランバンとアプタマーの共結晶に関しては、マイクロクリスタルのレベルの結晶化まで進んで来たため、概ね順調に進んでいる。
ボスホランバン・アプタマーを心不全治療薬として利用できるようにするために、in vivoでの作用の検討を進めて行く。In vivoでは、細胞内導入方法がこれまでと同様では効率が悪く、上手く行かない可能性がある。そのため、細胞透過性ペプチド付加などアプタマーの改良も検討して行く。アプタマニとの共結晶に関しては、結晶の成長条件を検討することにより高解像度での解析を目指して行く。
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