研究課題
酸化LDL受容体LOX-1が酸化LDLを結合する際に、その結合を数十倍のオーダーで高める血中分子を同定した(以下co-factorと呼ぶ)。本研究はこのco-factorとLOX-1の相互作用によって起こる現象を特に動脈硬化性疾患の病態生理と関連して解析することを目的としている。昨年度の研究で、LOX-1と血小板との相互作用へのco-factorの作用を解析したが、同時に凝固系への関与も強く示唆された。そこで、LOX-1がco-factorを介してどの凝固因子とどのように反応するのかのメカニズムの解析を行った。その結果第Xa因子によってトロンビンができる反応を促進することが明らかとなった。また、co-factorのどの部分と相互作用するかについても明らかになり、これによって、LOX-1-co-factor結合のカルシウム依存性のメカニズムが明らかとなった。これまで我々は、LOX-1とCRPが相互作用すること、そしてこれが補体系古典経路の活性化と結びつくことを明らかにした。さらに、LOX-1の遺伝子発現が誘導型であり、特定の領域の血管内皮細胞に発現することと併せて考えると、特定の領域に限局した補体系活性化を導くのに重要であると考えられることを提唱した。本研究成果についても同様に、局所に発現したLOX-1とco-factorおよび凝固因子、さらには血小板が相互作用することにより、凝固および血栓のできやすい場所が規定されている可能性がある。流動性のある血液との相互作用によって、特定の場所で炎症や血栓が起きるための血管内皮の局所的な制御は必ずしも明らかでなかったが、LOX-1のこのような機能が、そのよい説明となるかもしれない。
2: おおむね順調に進展している
焦点を特に、血栓凝固反応にあてているが、順調に研究は進行している。
in vitroでの血栓・凝固系とLOX-1との関連についての解析が進んだので、次年度は特にin vivoでの解析が進むようにしたい。また、炎症反応についても解析を進めたい。
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