研究課題
スフィンゴシン1燐酸(S1P)は酵母からヒトに至る真核生物に広く存在し、血管内皮細胞や繊維芽細胞等の増殖促進作用やアポトーシス抑制能など多彩な機能を有する脂質メディエーターである。中枢神経系ではSIPやその産生酵素スフィンゴシン・キナーゼ(SK)が豊富に存在するが、神経に特異的な機能に関しては不明であった。最近我々はラットの海馬の苔状線維にSKが豊富に存在することを免疫組織化学の手法を用いて明らかにした。これらの事実よりSKが神経伝達物質(グルタミン酸)の放出に関与する可能性を証明するために、SKの阻害剤やSIPがグルタミン酸放出に与える影響をラットの海馬スライスを用いて解析した。その結果、海馬の特にCA3領域に於いてS1Pが苔状線維からのグルタミン酸放出を引き起こすことを証明した。今後更に記憶形成のモデル実験系として知られるLTP形成に及ぼすSIPの影響を調べることにより、記憶・学習を中心とした海馬機能に於けるSIPシグナル伝達系の生理的意義を解明してゆきたい。
すべて 2010 その他
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http://www.med.kobe-u.ac.jp/biochemistry/publication.html