研究課題/領域番号 |
22390053
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中村 俊一 神戸大学, 医学研究科, 教授 (40155833)
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研究分担者 |
岡田 太郎 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (80304088)
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キーワード | スフィンゴシンキナーゼ / スフィンゴシン1リン酸 / 海馬 / 神経伝達物質 |
研究概要 |
スフィンゴシン1燐酸(SIP)は酵母からヒトに至る真核生物に広く存在し、血管内皮細胞や繊維芽細胞等の増殖促進作用やアポトーシス抑制能など多彩な機能を有する脂質メディエーターである。中枢神経系ではSIPやその産生酵素スフィンゴシン・キナーゼ(SK)が豊富に存在するが,神経に特異的な機能に関しては不明であった。 最近我々はラットの海馬の苔状線維にSKが豊富に存在することを免疫組織化学の手法を用いて明らかにした。これらの事実よりSKが神経伝達物質(グルタミン酸)の放出に関与する可能性を証明するために、SKの阻害剤やSIPがグルタミン酸放出に与える影響をラットの海馬スライスを用いて解析した。その結果、海馬の特にCA3領域に於いてSIPが苔状線維からのグルタミン酸放出を引き起こすことを証明した。更に、記憶のモデル実験として広く用いられる海馬スライスの長期増強効果(LTP)実験において、SKを抑制すると苔状線維・CA3錐体細胞間のシナプスのLTP誘導が特異的に阻害される事を見出した。今後更に記憶形成のモデル実験系として知られるLTP形成に及ぼすSIPの影響を調べることにより、記憶・学習を中心とした海馬機能に於けるSIPシグナル伝達系の生理的意義を解明してゆきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに神経細胞において観察されたSIPによるグルタミン酸放出の調節が、海馬スライスに用いた実験においても認められることが明らかとなった。これは発達した脳組織においてもシナプス間の神経伝達物質の放出がSlPにより調節されていることを示す強い根拠となる。
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今後の研究の推進方策 |
今後更にスライス実験から個体実験へと研究をシフトすることにより、SIPによる脳機能の調節機構を明らかにしてゆきたい。
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