本研究では、インスレーター結合因子CTCF(CCCTC結合因子)の多機能性に着目し、高次の遺伝情報制御機構を明らかにすることを目的とする。CTCFのタンパク質複合体の実体を解明するとともに、その転写調節、インスレーター(クロマチンの境界)、クロマチン・ループ形成等の多機能について、ヒト遺伝子クラスター領域で解析を行い、細胞機能と生命現象における意義を明確にすることが全体構想である。各種培養細胞株を用いて、CTCF、共役因子RAD21に対する抗体を用いたクロマチン免疫沈降を行い、ChIP-Chip/Seq解析を用いて、結合部位およびインスレーターの候補部位を同定した。さらに、発生分化、炎症反応、細胞周期制御に関わる遺伝子クラスター等の領域を抽出し、クロマチン免疫沈降を行い、遺伝子クラスター内のCTCF結合部 位をリアルタイムPCR法で確認した。また、遺伝子プロモーターとエンハンサー、CTCF結合配列を組み込んだルシフェラーゼ発現ベクターを作製し、エンハンサー遮断作用、サイレンサー作用等を検討した。CTCF、RAD21に対するRNA干渉法を用いて、ノックダウン下での遺伝子クラスターの発現変化および染色体コンフォメーションキャプチャー法で検討し、遺伝子クラスター領域全体におけるCTCFの重要な役割を明らかにした。関連するクロマチン因子(ジンクフィンガータンパク質、DNAメチル化・複製の関連因子)について機能解析を行い、超ゲノム制御の機構の一端を報告した。
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