研究課題/領域番号 |
22390056
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
山田 雅巳 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (10322851)
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研究分担者 |
片岡 洋佑 独立行政法人理化学研究所, 細胞機能イメージング研究チーム, チームリーダー (40291033)
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キーワード | 滑脳症 / カルパイン阻害剤 / LIS1 / 細胞内物質輸送 / 細胞質ダイニン / 神経遊走 |
研究概要 |
我々は、ヒト滑脳症の発症が遺伝子LIS1変異に起因することから、LIS1に着目して研究を進めてきた。これまでに、カルパイン系タンパク質分解酵素によってLIS1が分解されること、カルパイン阻害剤(ALLNおよびE64d)によって滑脳症モデル(LIS1ヘテロ欠損)マウスでみられる細胞あるいは個体レベルでの症状が改善されること明らかにした。しかしながら、これらのカルパイン阻害剤は、(1)一般的なシステインプロテアーゼ阻害剤であり、カルパインに対する特異性が低いこと、(2)脳血液関門を通過することができないことから、妊娠中の母体へ腹腔内投与することしかできなかった為、ヒト滑脳症の治療薬への応用は困難であった。今回、小脳の顆粒細胞の凝集塊を用いた神経遊走アッセイ法をより高精度に改良し、より選択性が高く、副作用の少ないカルパイン阻害剤をLIS1ヘテロ欠損細胞を用いて新たにスクリーニングすることができた。今後さらに、この特異的カルパイン阻害剤を滑脳症モデル(LIS1ヘテロ欠損)マウスに生後投与し、運動失調等の個体レベルでの改善がみられるか否かを検討し、ヒト滑脳症治療薬の開発へと繋げたい。ヒト滑脳症は、未だ有効な治療法が確立されておらず、重度の精神遅滞、てんかん発作等の主な臨床症状に対する対症療法に依存するのみであり、本研究に対する期待と意義は大きい。一方で、LIS1は、微小管モーターたんぱく質・細胞質ダイニンの輸送活性を制御することから、これらの細胞内物流の制御メカニズムを明らかにすることは、ヒト滑脳症の発症機構の解明についても重要である。今回、我々は、蛍光微小管を用いたin vitroでのGliding Assayを独自に確立し、LIS1による細胞質ダイニンの活性調節に関与する可能性のある第3の因子としての有力候補を複数同定することができた。今後、細胞内におけるこれらの因子の機能的役割をin vivo実験系で明らかにしたい。
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