研究課題
「炎症性ストレスによる慢性的な『miRNA機能阻害』によって引き起こされる炎症性発癌」という新規の疾患概念を検証するために、今年度は、miRNA反応性GFPマウスを作製し、炎症性発癌モデルにおけるmiRNAの機能変化を検定した。CMVプロモーターで転写される蛍光蛋白であるGFP遺伝子の3'UTRにmiRNA122/let7b/miR29bの標的配列を組み込んだコンストラクトを恒常的に発現するトランスジェニックマウスを作製し、AOM/DSSを用いた大腸の炎症性発癌モデルの過程でのGFPの発現強度を免疫組織染色で検討した。その結果、持続炎症によってGFPの発現は増強し、慢性炎症に伴ってmicroRNAの機能が減弱することが示唆された。いっぽう、in vitroの検討により、microRNAの機能をみるためのレポーターコンストラクトと大腸癌細胞株を用いて、炎症性サイトカイン(TNFα、IL1α、IL1β、IL6)存在下におけるmicroRNAの機能変化を確認したところ、炎症性サイトカインによってmicroRNAの機能は阻害された。また、let-7によって発現が抑制されているLIN28Bは癌遺伝子でありmicroRNA産生を抑制する機能を持つが、炎症性サイトカインによってlet7のLin28B発現抑制作用が減弱し、Lin28Bの発現量が増加した。In vivoでの炎症性発癌の過程でもLin28Bの発現が増えていた。これらの結果は持続炎症に伴うmicroRNAの機能不全が炎症性発癌の一因となることを示唆していると思われるが、今後介入実験を加えて検証する予定である。
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Nat Genet.
巻: (In press)(掲載確定)
Hepatol Int.
J Hepatol.
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