研究課題/領域番号 |
22390060
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
青山 俊文 信州大学, 医学系研究科, 教授 (50231105)
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研究分担者 |
原 厚 信州大学, 医学系研究科, 准教授 (70126697)
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キーワード | C型肝炎 / PPAR / HCC / 脂肪肝 / 肝発癌 / コア蛋白 / フィブレート / EPA |
研究概要 |
当該年度の研究成果については、PPARalphaアンタゴニストの一種であるMK886は肝発癌を阻止する効果が中途半端であることが明らかになった(薬物未処理のモデルマウスの場合、30匹のマウス群において、生後約22カ月において、約10匹に肝発癌が生じるが、MK886投与の場合は6匹に単発肝癌を生じた)。投与量不足が原因と推定されるため、MK886投与量を3倍程度に増やし、従来と同様の投与実験を行う必要がある。従来の投与においては、副作用はほとんど検出されず、血清中の脂質量・炎症パラメーターは正常域にとどまった。従って、MK886投与量を3倍程度に増大しても副作用は現れないと推察される。当該年度の研究成果から、MK886の肝発癌阻止効果が向上することが期待できる結果が得られたことは意義深いものと考えられる。既存の抗高脂血症剤投与の場合、エイコサペンタエン酸(EPA)投与は28匹のマウスのうち11匹に単発肝癌を生じる結果となり、肝発癌阻止効果がないことが判明した。一方、2種のフィブレート系薬剤(ベザフィブレート・フェノフィブレート)を臨床用量で投与したところ、双方とも、26~32匹のマウスのうち1匹のみ不明瞭なHCCを生じた。このHCCを組織学的に解析したところ、線維腫であり、良性との判定を得た。2種のフィブレート系薬剤の臨床用量投与が強力な肝発癌阻止効果を示す結果となったことは非常に重要な成果であり、PPARalphaアゴニストであっても、臨床用量投与ではPPARalpha活性化を生じないことに対する機構解明の重要性を示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
持続的PPARalpha活性化に基づく肝発癌を阻止する方法について検討した結果、少なくとも4種類の化合物については明瞭な阻止効果の有無を判定出来た。その結果は当初の予断を超えるものであるが、それらの分子機構解明がなされていないレベルであるため。
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今後の研究の推進方策 |
MK886投与量を3倍程度に増大させ、副作用を伴わずに肝発癌を阻止する効果が有るか否かを検証すること。もし、阻止効果があれば、その分子機構を明らかにする。2種のフィブレート系薬剤の臨床用量投与が強力な肝発癌阻止効果を示すことが明らかになったため、それらに共通すると思われる分子機構を検索すること。
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