C型肝炎ウイルス(HCV)コア蛋白を発現するトランスジェニックマウスは20ヶ月程度の飼育で約30%の個体に肝癌を生じるが、この肝発癌を阻止する化合物の同定を目標とした研究を行ってきた。PPARalphaアンタゴニストであるMK886経口投与を初年度から始めたが、4mg/kg/日の投与では、25匹のマウスのうち5匹に小サイズの肝癌が生じ、発癌阻止作用としては不十分なレベルであった。昨年度から本年度にかけて、投与量を10mg/kg/日および40mg/kg/日に増加させた実験を行った。10mg/kg/日投与の場合、27匹中4匹に小サイズの肝癌が生じたが、40mg/kg/日投与の場合、25匹中8匹が中途で死亡したものの、残りの17匹全てにおいて肝発癌は生じなかった。40mg/kg/日投与の場合、毒性はあるものの、PPARalpha活性化は十分阻止できるという予測が得られた。PPARalpha活性化の変化を調べるために、4mg/kg/日・10mg/kg/日・40mg/kg/日投与マウスから発癌を呈さない5匹ずつを選択し、肝臓を対象として、中性脂肪量・肝組織染色・MCADmRNA発現量・AOXmRNA発現量・PPARalpha mRNA発現量・PPARbeta mRNA発現量・PPARgamma mRNA発現量を調べた。40mg/kg/日投与マウスでは中性脂肪量はほとんど変化しなかったが、肝臓におけるPPARalphaの標的遺伝子であるMCADおよびAOXの発現は低下していた。PPARalpha自体の発現も低下していた。これらの結果は、予測通りに、MK886投与によりPPARalpha活性化が抑制されることを示唆した。
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