研究概要 |
癌幹細胞は癌細胞中にごく少数占めるのみで、通常状態では重要な生物学的役割を担っていないと思われるが、放射線、抗癌剤など癌細胞の生存にとって危機的な外的ストレスが加えられると、通常の癌細胞が容易に死滅するのとは対照的にquiecenceとなって抵抗性を発揮し、残存した癌幹細胞から新たな癌細胞が生み出されることで癌の治療抵抗性や治療後再発をもたらすと考えられ、前立腺癌においても例外ではない。しかしながら生物学的研究に耐えうる癌幹細胞を十分量確保することは極めて困難であるため、本研究では前立腺癌細胞に抗癌剤ストレスを長期に加えて幹細胞様細胞をより簡便に効率よく抽出し、その性状を検討することで癌幹細胞生存に関わる標的遺伝子やシグナルを特定し、その臨床病理学的意義を明確にすることを目的とした。前立腺癌細胞株としてLNCaP,DU145,PC3を癌細胞への致死的ストレスとして、放射線照射、etoposide, cisplatin, paclitaxel, docetaxelなどの抗癌剤を用いて検討したところ、LNCaP細胞にetoposide 1μMを無血清培地(成長因子は付加)下に刺激し、2ヶ月間培養することでCD133/CD44陽性細胞のpopulationを通常培養条件下に比して数十倍効率よく獲得できることが判明した。CD133/CD44陽性癌細胞はコロニー形成能やNOD/SCIDマウスにて腫瘍形成能を有することを確認している。今後は、抽出できた抗癌剤抵抗性CD133/CD44前立腺癌細胞を用いて、当教室で解明した前立腺transit amplifying cells生存に関わる分子やそのシグナル伝達をはじめ、既報告分子群などの生物学的意義を網羅的に検討し、治療抵抗性癌幹細胞の生存シグナルを解明していく予定である。
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