研究課題
癌は少数の癌幹細胞 (cancer stem cell) により形成、維持されているが、前立腺癌においても癌組織中に存在する幹細胞と類似の機能を有する腫瘍始原細胞(tumor initiating cell, TIC)が癌の発生のみならず、様々の治療や進展プロセスに重要であるといわれている。本研究ではTICを豊富に含むholocloneを安定的に樹立し、holocloneの維持メカニズムに細胞内活性酸素を調節するsyndecan-1が必要であることを見出した。今年度は、前立腺癌発症モデル動物(TRAMPマウス)にsyndecan-1阻害剤であるOGT2115あるいはsyndecan-1 siRNAを腹腔内投与すると、前立腺癌の発生を有意に抑制させたが、異型増殖性病変(ヒトhigh-grade intraepithelial lesionに相当)に対する抑制効果は認められなかった。また、マウス前立腺癌細胞内のc-kit/CD44陽性細胞数が強く抑制されることも明らかとなった。以上の結果から、syndecan-1はTICの生存と増生によって、前立腺浸潤癌への進展に大きく関与するといえる。加えて、ヒト前立腺全摘症例116例を用いてsyndecan-1発現陽性率を免疫組織化学的に検討したところ、癌細胞におけるsyndecan-1発現レベルの高いscore2の症例では、有意に術後再発率が上昇することが判明した。実験的事実に加え、ヒトの癌組織上においてもsyndecan-1が前立腺癌の悪性度に重要な影響をもたらすことが示された。Syndencan-1は、前立腺癌TICの生存を促し安定的に供給することで前立腺癌発生・進展をもたらすと考えられ、今後、前立腺癌治療の重要な分子標的となると期待される。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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