研究概要 |
近年、ES細胞を初めとした幹細胞の多能性維持に関連する転写因子ネットワーク(Oct4,Sox2,Klf4,c-Myc,Nanog,Dax1,Rex1,Zpf281,NACC1)の活性化が、腫瘍の分化度や予後と密接な関連を持つことが報告された。我々は、このネットワークの一員であるNACC1(nucleus accumbence associated 1)が、核内外で多彩な翻訳後修飾を受けることで、複数のがん関連蛋白質との相互作用を生じ、その生物学的特性の形成に関与していることを解析している。本年度鉢、以下の事を明らかにした。 Project1 ●NACC1は、Cortactin、tubulinの脱アセチル化機構に影響を与え細胞骨格分子の制御による細胞運動の亢進に影響を及ぼした(論文を発表した) ●NACC1の過剰発現は、悪性黒色腫の予後予測因子となり得た(論文を発表した)。 ●NACC1の過剰発現はがん遺伝子ERBB2の細胞膜での安定的誘導につながり、乳癌細胞のHerceptinに対する感受性に影響を与えた。 Project2 ●肝癌ではNACC1と相互作用するHDAC6の発現が肝内転移と相関し、肝細胞の運動能に影響を与える事が明らかとなった。また、この相互作用の阻害にはCYLDの遺伝子産物が有効である事が判明した。 Project3動 ●次世代シークエンサーによるNACC1下流遺伝子の網羅的解析を行い、Wnt signal伝達系に係わるCHD8の発現が制御されていることが明らかとなった。
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