研究課題/領域番号 |
22390074
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
張ヶ谷 健一 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (40101894)
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研究分担者 |
北川 元生 千葉大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (40262026)
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キーワード | 腫瘍浸潤・転移 / EMT / CD44 / ヒアルロン酸 / RTK / EGFR |
研究概要 |
生体組織では、hyalronan(HA)は、HA合成酵素HAS1、HAS2またはHAS3、およびCD44依存的にビアルロニダーゼ(のHyal)1とHYAL2によって分解により合成される。HAとHYALsは複雑に腫瘍の増殖および転移に関与している。また、ランダムな細胞の動きは、一般的にがん細胞が原発巣から離脱して、周囲組織に浸潤する際の重要な細胞機構(EMT)である。増殖因子などの刺激因子を添加することなしにがん細胞が運動能を自発的に有している場合があり、この状態の運動能をbasal motility(BM)と呼ぶ。BMにおけるHAS2とHYAL2/CD44の役割を調べるために、我々は、HAS2とHAS3を発現しているHeLa細胞-S3細胞のBMをBoydenチャンバーアッセイにより検討した。HAS2のsiRNAノックダウン(KD)は、HeLa-S3細胞のBMを低下させた。HeLa-S3細胞は50ng/mlの高分子量HA(HMW-HA)を6時間培養上清中に分泌するが、CD44やHyal2をKDした細胞ではBMが消失し、また、これら分子をKDさせた細胞では外因性HMW_HAを添加しても、細胞の運動能を向上させることができず、MHW-HAはHYAL2-siRNAを処理したHeLa-S3細胞のBMの回復できた。これらの結果は、HeLaiS3細胞がBMを促進できるLMW-HAを自己産生できるシステムを固有に持っていることを示唆する。これらの結果は一部のがん細胞ではHAS2-CD44/HYAL2システムがオートクライン機構としてがん細胞細胞膜にあり、HMWHAを産生し、細胞膜で自己分解を介してLMWHAを創り出し、がん細胞の運動能を亢進させている。この知見はがん細胞の浸潤転移の初期機構と考えられ、がんの悪性度の評価ととくにがん転移の制御に向けた分子標的治療に展開されることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年までの成果をSaitoT(Int J Oncol)に報告してから、その後、個々の細胞運動を計測できるシステムを導入し、ピアルロン酸ががん細胞の浸潤転移機構に与える影響を分子レベルで解析している。とくに、この機構にNF-_kBやRanBPM分子の活性化、動態が重要であることを追求している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ビアルロン酸刺激にもとづく、がん細胞運動能の分子レベルの解析を、CD44,ERK1/2,RhoGTPase,NF-_kB,hMenaのバリアント、上皮間葉変換に関わる分子の関連を中心に解析する。このことにより、がん浸潤転移を阻止する治療に結び付けるように研究を展開する。
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