研究課題
CD44の細胞内ドメインには既知の酵素活性を示唆する構造は存在せず、他の細胞内会合分子の動員によってその多彩な細胞制御能が発揮されることが想定されている。我々は既にyeast-two-hybrid法でCD44細胞内ドメインへ会合する分子を3分子(RanBPM、hMena、clone3-11)同定している。これらの会合分子の低分子量ヒアルロン酸(LMWHA)-CD44相互作用における役割を、我々が会合を見出した分子のsiRNAknock-downを行い、細胞運動能、CD44核内移行を指標として検討した。23-kDaを中心としたLMWHAは極めて効率よくCD44の細胞質-核内移行を誘導することを我々は見出しており、我々の結果からはCD44はLMWHA刺激によりendocytosisされ、また、核内に移動すると考えられる。RanBPMはCD44の細胞質内ドメインに結合し、LMWHA-CD44相互作用を仲介する。この分子のknockdownによってLMWHA刺激によるCD44の核内移動が抑制され、さらに、RhoA活性化の抑制が解除される。したがって、LMWHAのligationによりRanBPMはCD44の細胞質内ドメインに会合することにより、CD44の核内移行を制御していると考えられる。そこでRanBPMとCD44結合ドメインをmimicしたペプチドを合成し、この間の会合を阻止し、細胞運動能を抑制することを検討した。現在、この阻止作用をもったペプチドをスクリーニングした段階で、さらに、これらのペプチドを用いて癌浸潤転移を阻止する治療戦略の確立を企画している。我々は、過去に、CD44が細胞膜上でHAの低分子化に働き、産生されたLMWHAはCD44の核内移行のtriggerとなることを示している(2010)。[考察]現在では癌細胞がEMTを起こすことにより癌幹細胞形質を持つ細胞が生まれることは多くの人が知っている。EMTが癌幹細胞の誕生に繋がるということで、現在の治療学的観点から考えると、EMTに大きな関わりを持つCD44機能の解明は癌幹細胞の発生や癌細胞の運動能の作用機構の解明に連なり、将来のがん治療の根幹に結びつく研究であると考えられる。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Int J Oncol.
巻: 41 ページ: 701-711
10.3892/ijo.2012.1493
Cancer Immunol Immunother
巻: 61 ページ: 145-155
10.1007/s00262-011-1084-5.