研究概要 |
細胞外マトリックスの構築と機能の中心的役割を担うと推測されるプロテオグリカン、バーシカン(versican、Vcan)の生体内機能を、同分子のコンディショナルノックアウトマウスを用いて解析してきた。平成22年度はCAG-CreERとの交配を大々的に行い実験群を増やすべく努力したが、Cag-CreER:Vcan<flox/flox>系の産出数は極めて少なく、実験群の準備ができなかったため、研究費を繰越した。引き続き平成23年度上期に多数のマウスを交配させて実験群の増加を図ったが必要数の確保ができないと判断したため、Cre酵素発現アデノウイルス(Ad-Cre)感染系に切り替えることとし、下期はその系の樹立へ向けての条件検討を行った。Rosa26:Vcan<flox/flox>マウスにAd-Cre溶液を皮内注入し1週間後に資料を採取して検討したところ、Ad-Creは表皮、汗腺、脂腺、真皮線維芽細胞に発現しており、免疫染色では感染部位におけるVanの発現は欠失していた。現在、このAde-Creによる部位特異的Vcanノックアウトマウス系を用いて、創傷治癒創出実験、がん移植実験を行っている。 VcanのG1、G3バリアントの哺乳動物発現プラスミドを作製した。Rosa26:Vcan<flox/flox>マウスから真皮線維芽細胞を採取し、培養系にてVcanの細胞挙動に於ける役割を解析している。さらに上記のプラスミドを用いたレスキュー実験を行って責任ドメインの同定を試みる。 コンドロイチン硫酸(chondroitin sulfate、CS)の合成酵素6種類のうち、Chondroitin Sulfate Synthese-2(CSS2)に2種類のバリアントCSS2A、CSS2Bが存在し、両者のバランスによってCS糖鎖長が調節されていることを報告した(Ogawa et al,J Biol Chem,2010)。昨年度はCSS2遺伝子欠損マウスの解析を行い、同マウスでは有意な異常は見られないがCS鎖が短縮していることを見出した。さらに軟骨細胞培養系にてCSS2がCS鎖長伸展の役割を果たしていることを確認した(論文投稿中)。
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