本研究では、高組み替え効率を有するトリB細胞DT40を利用してHC21に相同なマウス16番染色体(MC16)の部分トリソミーを有するDSモデルマウス、およびトリソミー上の遺伝子をノックアウトしたマウスを高効率に作成し、トリソミーマウスに於いてDS精神遅滞の背景をなすと思われる生化学的/生理学的/行動学的/組織学的異常を見いだし、更にノックアウトにより当該候補遺伝子のみが2コピーになったトリソミーマウスおけるそれらパラメーターの改善の有無を検証することにより、HC21相同MC16上の主要責任遺伝子を同定し、それらを通してダウン症精神遅滞の発症機序を明らかにすることを目的とした。今年度は、DT40細胞内にて作出したHC21相同MC16部分染色体(Ts1Cjeセグメント相当)を持つCHO細胞をマイクロセル化しマウスES細胞に導入して得られた当該セグメントを部分トリソミーで有するES細胞を用いてマウスを作製したが、期待したマウスは得られなかった。現在、同様の手順を繰り返すとともに、選択マーカーを変更して得られたマウスなどについて、現在当該染色体の完全性の検証を行っている。またTs2Cjeトリソミーセグメントに相同な領域や、更にその領域を分断したMMU16領域を持つDT40なども並行して作成中した。これらは、候補領域の更なる絞り込みに強力なツールとなる。更には複数種の候補遺伝子についてノックアウトしたセグメントを持つDT40細胞およびマウスの作成も並行して行った。
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