研究概要 |
サルモネラ感染後の宿主高次機能の多岐にわたる変化は、未だ同定されていない多数の病原分子(エフェクター)と標的分子の存在を強く示唆している。本研究は申請者らが開発したインフォマティクス支援インタラクトーム網羅的解析法によって昨年度までに同定された新規エフェクター候補3種について、宿主標的分子の同定と相互作用解析を行い、サルモネラ病原戦略と宿主応答の分子機構を解明することを目的として行った。その結果候補の中でSTM1055がサルモネラのIII型分泌装置により宿主細胞へ輸送され、サルモネラのマクロファージ内増殖に関係するエフェクターであることが明らかとなった。又、昨年ゲノムワイドトランスクリプトーム解析により発見したCaspase-8活性化を介して感染宿主細胞の運命を決定するキーエフェクターGogA,GtgAの標的分子が、自然免疫のパターン認識受容体RIG-1ファミリーに属するDdx50であると考えられたことから、GogA,GtgAの機能解析を通して、サルモネラ感染によるRIG-1ファミリー分子を介した炎症と細胞死誘導の分子機構解明を第2の目的として研究を行った。GogA,GtgA2は、マクロファージ細胞内でCaspase-8活性化を介してNF-кBを活性化し、IL-1β等の炎症性サイトカイン遺伝子の転写を誘導することが明らかとなった。さらにGogA,GtgAはDdx50に結合することさらにその結合には、Ddx50のHELICcドメインとDEADcドメインが必須で有ることが明らかとなった。DRIG-1ファミリーはウイルスRNAの認識受容体として知られているが、細菌関連分子を認識するという報告はない。本研究により得られる成果は広く細菌感染と宿主応答研究に大きなインパクトを与えると期待できる。
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