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2012 年度 実績報告書

ビブリオ属細菌の環境応答能調節とその生理的意義

研究課題

研究課題/領域番号 22390086
研究機関法政大学

研究代表者

川岸 郁朗  法政大学, 生命科学部, 教授 (80234037)

研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2014-03-31
キーワードコレラ菌 / 海洋ビブリオ菌 / シグナル伝達 / 走化性 / べん毛
研究概要

(1)コレラ菌に関する成果:(a) 誘引・忌避物質とその受容体(MLP)の同定および機能解析:ペリプラズム領域にPAS様ドメインを2つもつMlp24がアミノ酸受容体であることを証明し,論文を発表した.また,Mlp24と近縁のMlp37がさまざまなアミノ酸に加えてタウリンも結合し,その結合には1つ目のPAS様ドメインが関与することを見出した.PAS様ドメインを1つだけもつMlp2とMlp3もアミノ酸走性を媒介するが,アミノ酸は直接結合しないことを示した.(b) 培養条件による受容体の発現・機能調節とその機構の解析:Northern blotting解析により,Mlp37およびそれと相同なMlp10の培養温度にる発現調節が転写レベルで起こることを示した.(c) 受容体のCheシステムへの帰属:mlp24, mlp32, mlp37三重欠失株により,さらに2つの受容体Mlp28, Mlp29がアミノ酸走性を媒介することを見出した.(d) Che蛋白質の局在解析:システムIとIIIのChe蛋白質の局在について,薬剤を用いた細胞分画解析を行った.
(2) 海洋ビブリオ菌に関する成果:(a) 誘引・忌避物質とその受容体の同定および機能解析:海洋ビブリオ菌のMLPのうち,ペリプラズム領域にPAS様ドメインを2つもつVaMlp17およびPAS様ドメインを1つもつVaMlp1がアミノ酸走性を媒介することを見出した.(b) 培養条件による受容体の発現・機能・局在調節とその機構の解析:スイミング細胞(側毛非発現)とスウォーミング細胞(側毛発現)においてシステインに対する走性応答が異なることを見出した.また,VaMlp17の細胞内存在量が側毛発現時に上昇することを見出した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コレラ菌,海洋ビブリオ菌のアミノ酸走性受容体を同定できている.とくに,コレラ菌Mlp24については,構造-機能相関を明らかにし,論文として発表した.Mlp37については,タウリン認識能,培養温度による発現誘導などから,病原性との関わりが示唆されており,これについても論文投稿を準備中である.CheシステムI, IIIコンポーネントの局在制御についても,解析を進める中で病原性との関わりが示唆され,論文投稿準備中である.また,Mlp2とMlp3については,アミノ酸を直接結合せず,応答にはペリプラズムのアミノ酸結合蛋白質が関与することが示唆されている.この候補蛋白質についても解析中である.新たなアミノ酸走性受容体(またはトランスデューサー)も見出した.このように,とくにコレラ菌において,環境応答の分子機構と生理的意義に関する研究は計画以上に進展している.海洋ビブリオ菌の解析は予想以上に困難で,やや遅れているが,アミノ酸受容体を2種同定するなど,総合的には順調に進展している.

今後の研究の推進方策

前年度までの研究成果を公表する.コレラ菌Mlp37がアミノ酸・タウリン受容体であり,培養温度により発現誘導を受けることを示した研究について,論文にまとめ投稿する.コレラ菌CheシステムI, IIIコンポーネントの局在制御についても,論文にまとめ投稿する.
前年度までの研究を継続・発展させ,つぎの解析を行う.(a) コレラ菌アミノ酸走性受容体の機能解析.とくに,Mlp2, Mlp3のアミノ酸受容に必要なアミノ酸結合蛋白質の同定と機能解析, (b) コレラ菌MLPのCheシステムへの帰属, (c) コレラ菌MLPおよびChe蛋白質の局在・発現解析,(d) 海洋ビブリオ菌アミノ酸走性受容体の機能・発現解析, (e) GlcNAcとその重合体に対するビブリオ菌の走性の解析

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 講座「細菌の環境応答と多刺激認識能」6. 細菌走化性受容体の多刺激認識能2013

    • 著者名/発表者名
      西山宗一郎
    • 雑誌名

      日本防菌防黴学会誌

      巻: 41 ページ: 35-43

  • [雑誌論文] 細菌の走化性とその調節の分子機構2013

    • 著者名/発表者名
      山元季実子
    • 雑誌名

      化学療法の領域

      巻: 29 ページ: 91-99

  • [雑誌論文] Mlp24 (McpX) of Vibrio cholera Implicated in Pathogenicity Functions as a Chemoreceptor for Multiple Amino Acids2012

    • 著者名/発表者名
      So-ichiro Nishiyama
    • 雑誌名

      Infection and Immunity

      巻: 80 ページ: 3170-3178

    • DOI

      10.1128/IAI.00039-12

    • 査読あり
  • [学会発表] Structure and function of bacterial signal transducing sensor complexes2013

    • 著者名/発表者名
      川岸郁朗
    • 学会等名
      第86回日本細菌学会総会 国際シンポジウム "Bacterial nanomachines: substrate targeting and translocation"
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉県)
    • 年月日
      20130318-20130320
    • 招待講演
  • [学会発表] コレラ菌の走化性受容体発現の温度による制御2013

    • 著者名/発表者名
      西山宗一郎
    • 学会等名
      第86回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉県)
    • 年月日
      20130318-20130320
  • [学会発表] 海洋細菌Vibrio alginolyticus新規アミノ酸走性トランスデューサーの同定2013

    • 著者名/発表者名
      辻友香子
    • 学会等名
      2012年度細菌べん毛研究交流会
    • 発表場所
      しん喜(群馬県)
    • 年月日
      20130303-20130305
  • [学会発表] Localization control of chemotaxis-related signaling components of V. cholerae2013

    • 著者名/発表者名
      Geetha Hiremath
    • 学会等名
      BLAST XII
    • 発表場所
      Tucson, Arizona, USA
    • 年月日
      20130120-20130125
  • [学会発表] コレラ菌走化性解析のためのスウォームアッセイ法の開発2012

    • 著者名/発表者名
      岩﨑良祐
    • 学会等名
      第50回日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県)
    • 年月日
      20120922-20120924
  • [学会発表] コレラ菌新規アミノ酸走性トランスデューサーの同定と機能解析2012

    • 著者名/発表者名
      川口徹也
    • 学会等名
      第50回日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県)
    • 年月日
      20120922-20120924
  • [学会発表] コレラ菌走化性因子ホモログの局在制御機構の解析2012

    • 著者名/発表者名
      岡部紘輝
    • 学会等名
      第50回日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県)
    • 年月日
      20120922-20120924
  • [学会発表] Chemoreceptor-like proteins of Vibrio cholerae, each with a single periplasmic PAS-like domain, that mediate taxis toward amino acids2012

    • 著者名/発表者名
      川口徹也
    • 学会等名
      Receptor Fest XV
    • 発表場所
      University of Colorado, Boulder, Colorado, USA
    • 年月日
      20120805-20120809

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公開日: 2014-07-24  

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