コレラ菌アミノ酸走性が37℃培養で増強されることを見出している.今回,主要アミノ酸受容体Mlp24とMlp37の発現について解析し,Mlp37蛋白質およびそのmRNAの細胞内存在量が37℃培養で増加することを見出した.これに対応して,Mlp37特異的誘引物質タウリンに対する応答も37℃培養で大きく増強された.プラスミド上からMlp37を発現させると,タウリン応答の温度依存性は失われた.タウリンが胆汁の主要成分であることを考え合わせると,タウリン走性とその受容体の発現調節はコレラ菌感染過程で重要な役割を果たす可能性がある.また,コレラ菌が尿素に対して走性応答を示すこと,この応答も37℃培養で増強されることを見出した.一方,同じビブリオ属の海洋ビブリオ菌においてもアミノ酸走性センサーを同定し,ペリプラズム結合蛋白質の関与を示唆する結果を得た.さらに,走化性シグナル伝達系因子と相同性をもちながら走化性に関与しない蛋白質群について,GFP融合体を用いた局在解析を行い,微好気条件またはエネルギー代謝阻害剤存在下で極局在することを見出した.すなわち,これらのシグナル伝達系は宿主腸内などの微好気条件で働く可能性がある.以上の成果は,ビブリオ属細菌環境応答・病原性に関する重要な知見である.以上の主要な成果について,1報の論文を投稿中(査読コメントを受け改訂中),もう1報の論文も投稿直前である.
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