我々は、EBウイルス(EBV)陽性胃がんにおいて、EBVがコードする小RNA分子EBERが宿主蛋白であるループス抗原Laとの複合体として細胞外へ放出され、そのEBERが自然免疫系のウイルス二本鎖RNA検知蛋白toll-like receptor 3(TLR3)を活性化し、その結果誘導されたインスリン様増殖因子IGF-1が胃がん細胞のオートクライン増殖因子として作用していることを明らかにした。今年度の研究では、抗La抗体がLa/EBER複合体によるTLR3活性化を阻害し胃がん細胞の増殖を抑制するか否かの検討を行った。市販の4種類の抗La抗体についてEBV陽性胃がん細胞株の増殖への影響を調べた。その結果、4種類すべての抗体でコントロール抗体に比較して増殖抑制効果を認めた。さらに、医薬品向けの抗La完全ヒト抗体開発に向けての検討を行った。抗体作製法は、ヒト血液Bリンパ球へEBVを感染し増殖させ、そこから抗La抗体産生細胞クローンを分離するという方法である。先ず、La抗体スクリーニングのためのELISA系を開発し、SLE患者血清中に抗La抗体が存在するか否かを検討した。71検体中16検体(23%)で抗La抗体が検出された。現在、血清中に抗La抗体が検出された16検体について順次、血液Bリンパ球へEBVを感染し、抗La抗体の作製を試みている。
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