研究課題/領域番号 |
22390090
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
岡本 宏明 自治医科大学, 医学部, 教授 (30177092)
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研究分担者 |
田中 利典 自治医科大学, 医学部, 講師 (30146154)
高橋 雅春 自治医科大学, 医学部, 講師 (70326841)
長嶋 茂雄 自治医科大学, 医学部, 講師 (60433116)
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キーワード | E型肝炎ウイルス / 感染培養系 / 感染性cDNAクローン / ORF3蛋白質 / PSAPモチーフ / Tsg101 / 放出機構 / MVB sorting |
研究概要 |
今年度の研究では、研究代表者らが確立した効率的な感染培養系を駆使し、E型肝炎ウイルス(HEV)の"enveloped virus"様のユニークな放出機構の解明を目指した。HEVの感染性cDNAクローン(pJE03-1760F/wt)のORF3蛋白質に認められるPSAP配列にアミノ酸置換を導入し、ORF3_PSAP変異ウイルスを作製した。この変異ウイルスは、細胞内での増殖レベルや蛋白発現レベルが野生株と同等でありながら、培養上清中への産生量が△ORF3(ORF3蛋白質欠失変異体)と同程度まで著しく減少した。また、ORF3_PSAP変異ウイルスは野生型ウイルスと異なり、粒子表面を細胞由来膜成分やORF3蛋白質に覆われていないことが分かった。加えて、ORF3蛋白質のPSAPモチーフは、細胞内のtumor susceptibility gene 101(Tsg101)と結合していることが明らかになった。すなわち、野生型およびPSAPモチーフを持たない変異型ORF3蛋白質を細胞内に発現させ、共免疫沈降反応によりTsg101との相互作用を解析したところ、野生型のORF3蛋白質はTsg101と共沈したが、PSAPモチーフを持たない変異型ORF3蛋白質では共沈が認められなかった。また、siRNA添加によるTsg101の発現低下により培養上清中でのHEV産生量が低下した。以上の結果から、ORF3蛋白質はTsg101との結合能を有し、その結合にはPSAPモチーフが重要であることが明らかになった。Tsg101は細胞内膜輸送系であるmultivesicular body(MVB)sortingの初期過程で働く宿主蛋白質の1つであり、HEVの放出に、HIVなどの"enveloped virus"と同様に、MVB sortingが関与している可能性が示唆された。
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