重症急性呼吸器症候群-コロナウイルス(SARS-CoV)の呼吸器系重症化機序を解明するため、同ウイルスによって惹起される細胞内シグナルを解析した。SARS-CoV スパイク(S)蛋白質を発現するシュードタイプウイルスをSARS-CoV の受容体である2 型アンギオテンシン変換酵素(ACE2)発現細胞に感染させると、ムチン5AC 遺伝子やTGF-β、plasminogen activator inhibitor-1 等の発現が誘導される傾向を認めた。一方、ACE2 を受容体として感染性を示すが、弱毒ウイルスであるNL63-CoV のS 蛋白質では、この様な現象は認められなかった。この現象を誘導するACE2 細胞内ドメインの責任部位と関与する宿主側因子を同定することで呼吸系重症化機序の理解が深まるものと思われる。
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