研究課題
胚中心(GC)において抗原に高い親和性をもつB細胞が選択されて記憶B細胞や長期生存プラズマ(LLP)細胞に分化する機構を解明するために、CD40LとBAFFを発現するフィーダー細胞40LBを用いたB細胞培養系を用いて研究を進めている。この系では、最初にIL-4で増殖したB細胞(iGB-4)はin vivoで記憶様B(iMB)細胞に分化し、次にIL-21でさらに増殖したB細胞(iGB-21)細胞はin vivoでLLP細胞となる。さらにサイトカイン無添加で培養した細胞(iGB-m)はiMB細胞への分化能を回復する。この系を用いて、iGB-21細胞と比較してiGB-4・iGB-m細胞に高く発現する遺伝子を記憶B細胞分化誘導因子の候補として、それらをレトロウィルスベクターによりiGB-4細胞に過剰発現させたところ、その後のCD138+プラズマ系細胞の増加を抑制し、gp49Bの発現を増強する遺伝子を見出した。また、その中には過剰発現によりin vivoでのiMB細胞形成を促進する遺伝子が存在した。現在、これらの発現をiGB細胞においてノックダウンすると、過剰発現の場合と逆の現象が起こるか検証している。さらに、これらの遺伝子のノックアウトマウスにおける免疫応答を調べる。GCB細胞の親和性選択のメカニズムを解明するために、膜型鶏卵リゾチームを細胞表面に発現する40LB-mHEL細胞とFasLを発現する40LB-mHEL-FL細胞を作製し、これらを順次用いた培養系で少数混在させた抗HEL-BCRノックインマウスB細胞のみならずC57B1/6マウスB細胞からもHEL結合性B細胞を選択・濃縮することができた。また、iGB-4・iGB-m細胞およびiMB細胞や生理的記憶B細胞に発現する膜蛋白質gp49Bを見出した。gp49B欠損マウスの免疫応答を解析したところ、1次免疫後のIgM抗体産生が亢進し、
3: やや遅れている
胚中心においてある時点で存在する抗体より親和性の高いBCRを有するB細胞だけがFasシグナル耐性となり選択されるという仮説を証明するための研究が当初の予定よりやや遅れている。その理由は、NPを抗原とする系が不安定であったため、抗原をmHELとしてHEL特異的B細胞を選択する系を作り直したからである。また、記憶B細胞誘導因子の候補を同定することはできたが、その機能の検証、特に、siRNAを用いてiGB細胞においてノックダウンを行うことが容易でなく、手間取って
上述のHELを抗原とした抗原特異的B細胞選択系を用いて、種々の親和性の抗HEL抗体を用いて親和性選択のメカニズムの解明を進める。記憶B細胞誘導因子の候補については、iGB細胞におけるノックダウンを行い、in vitroおよびiv vivoでの表現型を調べ、さらに候補を絞っていく。さらに、現在導入を進めている候補遺伝子のノックアウトマウスの免疫応答、特に記憶形成について解析する。また、記憶B細胞に選択的に発現している膜受容体についても、同様の手法で、記憶B細胞維持と応答における役割を解明する。
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