パーキンソン病に対する治療は薬物療法や手術を中心に進歩してきているが、そうした治療にも限界があることや経過が長期にわたるため、地域でいかにうまく生活できるかというQOLの視点に立ったリハビリテーションの必要性が説かれている。パーキンソン病患者の日常生活の中で特に問題となるのは転倒である。パーキンソン病の姿勢障害や転倒に関する研究は活発に行われてきているが、その多くは実験室という環は明らかにされていない。 本研究では、在宅パーキンソン病患者の日常生活での転倒の実態と転倒要因や生活環境・場面における姿勢調整能力の影響要因を解明するとともに、日常生活における転倒予防のための効果的な理学療法を創出し、転倒予防に向けた効果的な地域リハビリテーションプログラムの開発することを目的として、平成22年度から平成24年度に渡って研究を実施する計画である。 当初計画では、平成22年度には在宅パーキンソン病患者の転倒状況調査と生活環境下での姿勢調整能力・転倒要因の解明に取り組む予定であったが、対象者の選定が予定通り進まなかったため、在宅患者への訪問調査は調査表の作成と身体活動状況の解析方法を整備するに留まった。調査表については、内外の先行研究を参考として「生活場面での支障とADL場面での支障」「社会資源の活用状況」「過去に利用していたサービス内容」「実施している運動療法」の4項目から構成される評価表が作成された。身体活動状況については、小型3軸加速度計を用いた24時間の身体活動状況解析方法とビデオ動画による歩行解析方法をまとめ、学術誌に発表・印刷中である。今年度予定されていた在宅パーキンソン病患者の転倒状況調査と生活環境下での姿勢調整能力・転倒要因の解明については、次年度に繰り越して実施する予定である。
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