研究概要 |
パーキンソン病に対する治療は薬物療法や手術を中心に進歩してきているが、そうした治療にも限界があることや経過が長期にわたるため、地域でいかにうまく生活できるかというQOLの視点に立ったリハビリテーションの必要性が説かれている。パーキンソン病患者の日常生活の中で特に問題となるのは転倒である。パーキンソン病の姿勢障害や転倒に関する研究は活発に行われてきているが、その多くは実験室という環は明らかにされていない。 本研究では、在宅パーキンソン病患者の日常生活での転倒の実態と転倒要因や生活環境・場面における姿勢調整能力の影響要因を解明するとともに、日常生活における転倒予防のための効果的な理学療法を創出し、転倒予防に向けた効果的な地域リハビリテーションプログラムの開発することを目的として、平成22年度から平成24年度に渡って研究を実施するという計画である。 平成22年度に作成した在宅パーキンソン病患者の転倒状況調査表にもとづき、平成23年度は15人の在宅パーキンソン病患者に対して面接調査を実施した結果、「生活場面での支障とADL場面での支障」では"体の動きが鈍い""とっさの動作が困難""転倒しやすい"が7割を占めていた。「転倒の発生状況」については15名中10名(66.7%)が過去半年間に転倒を経験していた。「リハビリテーション実施経験」で経験有と回答したのは15名中3名(20%)のみであった。「運動習慣」があったのは半数弱(46,7%)で、種目については自らが判断して選択・実施されていた。一方、9名の在宅パーキンソン病患者に対して実施した24時間の身体活動状況調査から、パーキンソン病患者の身体活動量は若年成人との比較では低いものの,同年代の高齢者とはほぼ同程度であるが、一日の大半(43.6%)を座位で過ごしていることが明らかとなった。これは姿勢変換の困難さと転倒を回避しようという配慮が影響していると思われた。在宅パーキンソン病患者の身体活動量を高めるためには,転倒の危険性に留意しながら立位バランス,ADL能力の向上と特有な歩行障害へのアプローチを行うことが重要となることが示唆された。
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