本研究では、在宅パーキンソン病患者(以下PD)の日常生活での転倒の実態と転倒要因や生活環境・場面における姿勢調整能力の影響要因を解明するとともに、日常生活における転倒予防のための効果的な理学療法を創出し、転倒予防に向けた効果的な地域リハビリテーションプログラムの開発することを目的としている。研究最終年度である平成24年度の目標は、PDの家庭での動作障害度を定量的に評価するとともに、これまで明らかにしてきたPDの転倒要因に焦点を当てた総合的運動プログラムを立案することであった。 加速度計による運動解析システムを用いてPDの自宅での動作障害度を定量的に測定し、同年代の健常高齢者(以下健常者)との比較した結果、PDでは立位をとる時間は健常者より長く、歩行持続時間は短いことが明らかとなった。このことから、PDは移動している時間より動かないで立っているだけの時間が長いことが特徴として挙げられた。また、PDが苦手とする歩行中の方向変換動作について、3次元動作解析装置で動作中の頚部・体幹・骨盤の回旋角度と所要時間を測定したところ、PDではターン前から徐々に方向変換し、ターン後の3歩目で目標角度に到達することや、歩幅が小さく方向変換に歩数を要し、ゆっくりであることが確認された。これらの知見に基づいて、転倒につながる運動障害の要因として小さな動作、方向変換時の予測的頚の回旋に焦点を当てた総合的立位バランス運動プログラムが立案された。これにより本研究の所期の目的は達成されたが、現在、パイロット的に少数の症例に対してこれら試行プログラムを訪問理学療法にて展開し、その効果について分析中である。こうした研究成果に基づいて在宅パーキンソン病患者にとって最適な家庭訓練プログラムを完成させ、大規模介入研究により体系的な効果を検証することが、次期研究のテーマとして位置づけられる。
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