研究課題
救急医療においては、「救急車要請後、受け入れ先が決まるまでに多数の病院に照会を必要とし、病院到着までに時間を要する」といったことが社会問題化している。このような問題を解決するためには、総合的に多角的に、異なった視点から新しい要素を導入するような異分野技術を融合する学際的な研究が必要とされる。本研究は、最先端のIT技術(Information Technology:情報技術)であるユビキタスネットワーク技術を駆使して、救急医療機関を一元的に管理する次世代の医療情報システムを開発することを目的とする。本年度は、医療施設内の状況情報を収集するために「ユビキタス空間情報システム」を開発した。このシステムでは、GPSの利用が電波環境的にも位置精度的にも困難な病院内であっても、医療スタッフに保持させた医療用携帯端末から発する電波等を感知することによって、位置を把握し、それらの情報を共有することができる。これらの物理的な位置情報と、他の業務情報を統合し、高抽象度の知識情報処理を行うことで、病院全体の診療状況・業務状況を認識する。医療スタッフの業務状況(救急対応が可能か否か)および医療設備(ベッド、医療機器等)の稼働状況を把握するシステムとした。さらに、個々の医療機関におけるユビキタス空間情報システムを統合し、あらゆる病院の各診療科の医師を常時情報的に連携した状態にするシステムとする予定である。これは、救急隊・救急医療機関が相互に診察可否や空床有無などの救急医療情報を共有するシステムである。このシステムの有用性の評価と、運用方式を確立することを目的として、仮実証実験を行なう予定である。