本邦における医原性有害事象の疫学を明らかにするために、研究実施計画に沿い、急性期病棟入院患者を対象に前向きコホート研究を実施した。 今年度は、医原性有害事象の客観的評価基準および症例報告フォームを用いて、十分なトレーニングを受けた看護師レビューワーが昨年度に収集した一次データの追加情報をフォローし、収集された全ての一次データについて、独立した医師3名による二次レビュー作業を行った。 二次レビューの対象は、コホート研究を実施している2教育病院の急性期病棟において、A教育病院の外科系3診療科、内科系3診療科、ICUから495人、B教育病院の外科系8診療科、内科系7診療科、ICUから636人、の計1131人で、イベント総数はA教育病院で471件、B教育病院で2484件の計2955件であった。 二次レビュー作業を終えたデータは、医原性有害事象、エラー、潜在的医原性有害事象、または除外と同定され、これら同定されたイベントや患者情報と共に、研究補助員によりデータベースに入力される。今年度は、このデータベース作成も実施しており、現在データベースを元に解析を行っている段階である。 本データベースを用いて、本邦における医原性有害事象の発生率、医療行為の詳細、有害事象の詳細、重症度、予後などについて、詳細に分析する。また、エラーに関しても、エラー発生のプロセス、防止可能性、緩和可能性、有害事象発生のリスクなどについて統計解析を行う。さらに防止可能である医原性有害事象やエラーに関するリスクファクター分析を行う。これらの結果を臨床疫学的に解析することで、本邦における医原性有害事象の発生率や防止可能性、リスクファクターなどが明らかになると期待される。
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