研究課題/領域番号 |
22390109
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福永 浩司 東北大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (90136721)
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研究分担者 |
岩渕 好治 東北大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (20211766)
伊藤 芳久 日本大学, 薬学部, 教授 (50151551)
森口 茂樹 東北大学, 大学院・薬学研究科, 講師 (70374949)
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キーワード | 神経変性疾患 / 神経血管ユニット / 血管再生 / 神経再生 / CaMKII / バナジウム有機錯体 / ST101 / アルツハイマー病治療薬 |
研究概要 |
本研究では脳虚血やアルツハイマー病などの神経変性疾患における神経血管ユニット再生を目的としてシーズを探索し、その血管再生のメカニズムと脳機能改善を目的とした前臨床試験を実施した。最初に、バナジウム有機錯体VO(OPT)の脳血管再生作用のメカニズムを追究した。ラット四血管閉塞脳虚血モデルではVO(OPT)の前処置により、血管再生に重要なサイトカインであるエリスロポエチンとVEGFの発現が有意に上昇した。しかし、培養血管内皮細胞をVO(OPT)で処置してもこれらのサイトカインの誘導は観察されなかった。私達はin vivoの脳虚血モデルでは血管内皮細胞での発現誘導を確認していることから、間接的な作用であると考えて、今後は神経細胞とグリア細胞での誘導因子の探索を行う。次に、米国でアルツハイマー治療薬としての臨床試験が開始されたST101について、作用機序を検討した。その結果、ST101によるマウス大脳皮質のシナプス伝達増強(LTP)の促進とLTP発現に重要なカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKIII)の活性化反応がT型カルシウムチャネルの阻害剤で抑制されること。T型カルシウムチャネルを過剰発現したneuro-2A細胞において、パッチクランプ法でカルシウムイオン電流の測定を行い、ST101で増強されることを確認した。さらに、ST101による認知機能改善効果がT型カルシウムチャネル阻害剤で完全に抑制されることを確認した。既存のアルツハイマー治療薬とは異なり、ST101はT型カルシウムチャネルを活性化する新しい作用機序のアルツハイマー治療薬の候補物質である。本研究ではST101が認知機能改善作用に加えて、海馬歯状回における神経新生を促進し、抗うつ効果を発揮することを明らかにした。今後は神経新生作用に対するT型カルシウムチャネルの関与を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新規アルツハイマー治療薬候補薬であるST101の作用機序を明らかにするために、標的蛋白質としてT型電位依存性カルシウムチャネルを同定した。私達の成果は米国における臨床試験を推進する原動力となった。さらに、万一、臨床試験で副作用が発現したときの予防法や対処法を予測できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在臨床試験の第二相であり、有効性について臨床評価が出る。私達はST101の構造活性相関を検討して、さらに活性の強い誘導体を創製し、特許を申請した。ドネペジルに続く日本初のアルツハイマー治療薬に向けた前臨床試験を加速しなければならない。
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