近年、うつ病患者の脳内では活性型ミクログリアが増加しており、それがうつ病の病態発生機序に関与している、との仮説が提唱されている。本申請研究では、我が国で急速に普及しつつあるPositron Emission Tomography(PET)及び生物学的手法を用いることで、初発未治療うつ病患者脳内の活性型ミクログリア密度とそれに関連する生物学的マーカーを経時的に追跡する。これにより、まず、活性型ミクログリア及びそれに関連した生物学的マーカーのうつ病への関与を明らかにする。次に、それから得られた成果をもとに、PET及び生物学的マーカーを用いた、うつ病に対する新しい早期発見・早期治療システムを構築することを目標とする。対象には、初発未治療うっ病者、年齢・性別・学歴の一致した健常者である。対象者のリクルートメントは、共同研究協力体制を築いた複数の企業内において、初発未治療うつ病者の募集を行った。対象者の診断は、DSM-IVに基づいて行った。精神症状の評価の尺度には、精神症状の評価には、17-item Hamilton Rating Scale for Depression(17-item HAM-D)、17-item Hamilton Rating Scale for Anxiety(17-item HAM-A)を用いた。これらの評価は諸検査データとはblindに、PET施行当日に行った。PET検査施行と同時に血中マーカー検索のための血液採取も行った。具体的には、活性型ミクログリアと関連するBDNF等も検索する。これらの検査は、うつ病の発症中(first episode)及び寛解中(remission state)と、計2回施行する。現在、うつ病者では前頭葉の活性型ミクログリアが高く、それらは寛解すると低下する傾向がある。今後、症例数を増やし、事実を明らかにする必要がある。
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