研究概要 |
8週齡の雄、1型糖尿病モデルラットの腹腔内に0.136 μg/20 g body weightのフォスフォロチオエート型終末糖化産物―アプタマー(Advanced Glycation End-products、以下AGE-アプタマー、以下AGE-アプタマー)あるいはコントロールDNAアプタマーを持続的に投与し、経時的に糖尿病網膜症と血管リモデリングに及ぼす当該AGEアプタマーの効果について、非糖尿病コントロールマウス、コントロールDNAアプタマー投与糖尿病マウスと比較検討を行った。その結果、AGE-アプタマーの投与により、1)バルーン障害後の血管リモデリングが抑制されること、2)尿中8-OHdGなどの酸化ストレスマーカーの排泄量も低下すること、3)網膜におけるVEGF, MCP-1等の血管透過性や炎症を惹起する因子の遺伝子の発現が抑えられることなどが見いだされた。AGEアプタマーの投与により、1型糖尿病モデルラットの血糖値、血圧値、脂質値等の代謝系のパラメーターは何ら影響を受けなかったが、バルーン障害部位や網膜領域におけるAGEレベルがコントロールラットのレベルにまで抑制された。さらに、AGEによる血管内皮障害もAGEアプタマーにより抑えられることが見いだされた。以上のことから、AGE-アプタマーは、AGEと結合しその代謝、排泄系を促進することで作用をブロックし、糖尿病血管症の進展に保護的に作用するものと考えられた。
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