研究概要 |
キノンは紫外線照射を受けることにより、活性酸素と化学発光増強剤を同時に発生させる。このため、紫外線照射後のキノンにルミノールを添加することで、キノン濃度に応じた強い発光が生じる。本研究はこの原理に基づいて、生体キノンの高感度かつ選択的な化学発光定量法を開発し、生体試料へと応用することで、キノンの生体影響を明らかにすることを目的とする。 平成22年度はp-ナフトキノン誘導体であるビタミンK類を対象にHPLC-化学発光定量法を開発し、ヒト血漿試料へと応用した。すなわち、カラムで分離後のビタミンK類にオンラインで紫外線を照射後、ルミノール誘導体L-012を含む溶液と混合し、生じる発光を検出するという方法である。開発した定量法におけるビタミンK類の検出下限(S/N=3)は0.03-0.10ng/mLと高感度であり、さらに生体成分の影響を受けず極めて選択的に血漿中のビタミンK類を定量可能であった。本法により、健常人及び関節リウマチ患者より得られた血漿試料中ビタミンK濃度を測定し、その値を比較した。その結果、ビタミンK_1濃度に有意な差は観察されなかった一方で、ビタミンK_2濃度は健常人と比較して関節リウマチ患者で有意に低値を示した。さらに、関節リウマチの重症度に伴って血漿中ビタミンK_2濃度が低下していく傾向が見られた。したがって、関節リウマチの発症に血漿中ビタミンK_2濃度が関係することが示唆された。 また、発がんリスクファクターであるエストロゲンキノンや多環芳香族炭化水素キノンの定量法を開発するために、測定用標準物質として2-hydroxyestrone及びbenzo[a]pyrene-7,8-dioneの合成を行った。次年度以降はこれらのキノンを対象とする分析法の開発を行っていく予定である。
|