研究概要 |
キノンは紫外線照射を受けることにより、活性酸素や化学発光増強剤を発生させるという性質を有する。本研究では、このキノンに特異的な性質を利用する高感度かつ選択的なキノンの新規化学発光分析法の閉発を行っている。 平成23年度は測定操作の省力化と迅速化のために、マイクロプレートリーダーによるキノンの分析法の開発を行った。このとき、時間分解蛍光測定用プレートリーダーを用いることで、キノンへのパルス紫外線照射によって引き起こされる化学発光の検出が可能であった。96穴マイクロプレートのウェルにキノン溶液及びルミノール誘導体L-012の炭酸緩衝液溶液を添加した後、プレートリーダーにセットする。その後、各ウェルに対して波長250nmの紫外線をパルス照射し、紫外線照射後500μsから2000μsの間に生じる発光を波長450nmにおいて測定する。この操作を繰り返し、得られた発光量を積算してキノンの定量を行った。キノンとL-012を共に添加したウェルからのみ発光が観察され、その強度はキノン濃度に比例して上昇した。本法においては、9,10-anthraquinoneをはじめとするp-quinoneでは強い発光が得られるのに対し、9,10-phenanthrenequinone等のo-quinoneは発光を示さないという結果となった。 本法で高い発光を示した3種のキノン(9,10-anthraquinone, 1,4-naphthoquinone及びmenadione)について検量線を作成した結果、いずれのキノンについても0.05-150μMの濃度範囲で発光強度と濃度との間に相関係数0.999以上の良好な直線関係が得られた。また、本法におけるmenadioneの検出下限(blank+3SD)は0.01μMであった。本法における1試料あたりの測定時間はわずか5秒であり、キノンのハイスループット分析法として有用であることが明らかとなった。
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