研究課題/領域番号 |
22390117
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
小寺 義男 北里大学, 理学部, 准教授 (60265733)
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研究分担者 |
佐藤 雄一 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (30178793)
松本 和将 北里大学, 医学部, 講師 (70306603)
岩村 正嗣 北里大学, 医学部, 講師 (20176564)
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キーワード | 血清 / タンパク質 / ペプチド / 診断マーカー / アルブミン結合成分 |
研究概要 |
【1】ペプチドを対象とした研究 (1)DS法(Differential Solubilization法)で抽出したペプチドを可溶化するための方法の確立 DS法では抽出したペプチドの最終段階の濃縮のために凍結乾燥を用いる。しかし、DS法で抽出したペプチドは上記の通りアルブミンなどのキャリアプロテインに結合した疎水性の高いペプチドを多く含んでいるため、この凍結乾燥物(粉末)の再溶解の回収率が低いことが予想された。そこで、市販の3種類の界面活性剤を用いて再溶解時の回収率を高くし、かつ、その後の分析を可能とする再溶解法を検討した。その結果、1種類の界面活性剤で可溶化効率が高くなり、かつその後の分析に影響を及ぼさないことがわかった。 (2)膀胱癌、腎細胞癌診断マーカーの探索 DS法で抽出したペプチドを直接LC-MSで分析するための再現性の高い方法を確立した。この方法により腎細胞癌術前、術後患者血清計40例(術前20例、術後20例)を用いた診断マーカー候補ペプチドの探索を行った。その結果2種類の診断マーカーペプチドの探索に成功した。このペプチドを膀胱癌手術前、手術後の血清計40例について調べた結果、膀胱癌では変動しないことがわかった。現在論文作成中である。 【2】タンパク質を対象とした研究 (1)SF法の有用性の確認 既に開発済みの独自の血清分画法(SF法:Serum Fraction法)を用いて血清を3分画した成分をそれぞれ二次元電気泳動法で分離し、そこに含まれる主要なタンパク質の同定を行った。その結果、従来のアルブミン除去カラムでは損失していた成分(おそらくアルブミンに相互作用している成分)が抽出出来ていることが確認できた。現在、特許出願準備中である。 (2)SF法を起点とした診断マーカーの探索 SF法を膀胱癌患者の化学治療前後の血清分析に応用した。その結果、化学療法(MVAC法)治療効果が現れている患者血清中で増減するタンパク質を約10個探索することに成功した。現在、さらに詳細な分析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では血清中のアルブミンに結合したタンパク質、ペプチドを分析する方法を確立し、診断マーカーの探索に応用することを目的としている。本年度は、既に開発したSF法ならびにDS法の使用法と有効性を検討した。さらに、両方法を診断マーカーの探索に応用し、ペプチドに関しては論文作成を開始するまでに至った。以上のことより、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度同様にタンパク質分析とペプチド分析を区別して、それぞれ進める予定である。ペプチドについてはDS法で抽出出来ていない成分の抽出法の開発を行いつつ、診断マーカーペプチド探索法の高感度化を目指す。タンパク質については、現在、SF法と電気泳動を組み合わせた分析を行っているが、さらに高感度う分析を実現するため、SF法と質量分析計を組み合わせた方法を確立し、応用する。
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