研究課題
感染症および慢性炎症が全世界の発がん要因の約25%を占める。我々はこれまでに感染・炎症によって生じた活性酸素/窒素種を介したDNA損傷、特に変異誘発性DNA損傷塩基8-ニトログアニンおよび8-oxodGが発がんやその進展に重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。近年、感染・炎症によるエピゲノム異常(DNAメチル化、ヒストン修飾、microRNA等)が明らかになりつつある。さらに慢性炎症で組織再生のために増殖する幹細胞の発がんへの関与も注目される。感染やアスベスト曝露により、発がん好発部位に8-ニトログアニンが生成することを示した(Hiraku et al.Ann.NY Acad.Sci.,2010)。また、炎症関連酸化ストレスの遺伝子発現影響について検討した。ヒト前骨髄球性白血病由来HL-60細胞およびその過酸化水素耐性株を用いて過酸化水素を反応させ、遺伝子発現およびmicroRNAレベルを解析した。その結果、過酸化水素を介した酸化的DNA損傷とCYP1A1等の代謝酵素の発現上昇が認められた。また、当該遺伝子の3'UTRに相補性を有するmicroRNAが減少した。酸化ストレスが直接的にDNA損傷を引き起すことに加えて代謝酵素が発現上昇することで種々の発がん物質を代謝活性化し、DNA損傷、ひいては発がんのリスクを高める可能性が示された。また、種々の発がん性アリルアミンが代謝活性化を受け、DNA付加体形成のみならず、酸化的にDNAを損傷し、発がんに寄与するが、それにはN-hydroxy体をはじめとする化学構造が重要であることを明らかにした(Murata and Kawanishi, Front Biosci., 2011)。
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