研究課題/領域番号 |
22390123
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大平 哲也 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (50448031)
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研究分担者 |
磯 博康 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50223053)
北村 明彦 大阪府保健医療財団大阪府立健康科学センター, 健康開発部, 部長 (80450922)
山岸 良匡 筑波大学, 医学系研究科, 講師 (20375504)
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キーワード | 予防医学 / 高血圧 / 疫学 / 危険因子 |
研究概要 |
【目的】日本人の生活習慣の欧米化に伴い、高血圧に及ぼす生活習慣の影響が過去数十年に渡って変化してきた可能性が考えられる。しかしながら、高血圧と生活習慣との関連について、長期的な動向を検討した研究は少ない。そこで本研究では、わが国の高血圧の重要な危険因子である肥満および飲酒と高血圧との関連について長期的な推移を検討することを目的とした。 【方法】1975~2008年の33年間に秋田県I町、茨城県C市K地区、高知県N町、大阪府Y市M地区の健診を受診した40~74歳の地域住民男女を対象として、受診年別に第1期(1975~84年)、第2期(1985~94年)、第3期(1995~2000年)、第4期(2001~08年)に分け、それぞれの期間において高血圧と肥満、飲酒との関連を横断的に分析した。脳卒中、心筋梗塞の既往がある者、血圧値のデータがない者を除いた1期10,082人、2期11,778人、3期10,328人、4期10,963人を対象に解析を実施した。解析は高血圧(最大血圧≧140mmHg、最小血圧≧90mmHg、もしくは降圧剤服用者)と肥満(BMI≧25kg/m2)、多量飲酒(エタノール≧46g/日)との関連をロジスティック回帰分析により年齢調整、多変量調整オッズ比、および人口寄与危険割合(population attributable fraction : PAF)を算出した。 【結果】各期における高血圧の有病率は男性が52%、47%、41%、44%、女性が44%、41%、37%、36%であり、第1期から3期にかけては低下傾向がみられたが、男性では4期に上昇に転じた。肥満は男性では第1期から4期にかけて持続的に増加したが、女性ではその傾向はみられなかった。また逆に多量飲酒者は男性において第1期から4期にかけて低下していた。高血圧に対する多変量調整オッズ比を算出した結果、男性では肥満、多量飲酒はともに第1期から4期にかけて有意に高血圧に関連していたが、女性では肥満のみが関連し、多量飲酒は4期のみ有意に関連していた(オッズ比:2.12、p=0.01)。また、男性では肥満のPAFが12.4%、13.5%、13/2%、14.8%と増加傾向がみられたのに対し、多量飲酒は17.4%、16.2%、12.3%、7.3%と減少傾向がみられた。一方女性では、肥満のPAFは17.7%、17.2%、13.8%、14.6%とむしろ減少傾向であった。 【結論】男性では、1970年代から2000年代にかけて高血圧に対する肥満の人口寄与危険度が増加しつつあり、女性では近年多量飲酒者が多くなり、2000年代になって高血圧との関連がみられるようになってきた。地域における高血圧予防のために今後も継続的な肥満・飲酒対策を行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの地域・職域における循環器健診のデータセットの構築が完了しつつあり、高血圧の危険因子に関する推移について解析することが可能になった。また、新しい高血圧の危険因子として睡眠、心理的ストレスの影響についても解析する準備が整っている。さらに、家庭血圧を用いた高血圧の危険因子の評価について、本年度までに約1900人の調査が完了し、予定通り調査が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
睡眠と高血圧、心理社会的ストレスと高血圧との関連についての時代変遷についての解析を進めるとともに、家庭血圧と社会心理的ストレス・生活習慣との関連についての解析を実施していく予定である。また、昨年度までに引き続き地域住民における家庭血圧と社会心理的ストレスとの関連についての測定を実施する予定である。
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