研究概要 |
【目的】家庭で測定された血圧(家庭血圧)は、将来の脳卒中をはじめとする循環器系疾患の予測に有効であることが報告されており、その測定が広く普及している。それとともに、健診や医療現場では正常血圧であっても家庭では高血圧を示す隠れ高血圧(仮面高血圧)の存在が明らかになってきた。そこで本研究は、長期間疫学研究を実施している地域を対象として、隠れ高血圧の頻度及びその関連因子を検討することを目的とした。 【方法】秋田県及び大阪府住民の内、2009~2013年に健診を受診した40~75歳の男女を対象とした。対象者には自宅にて3日間の家庭血圧測定(起床時、就寝時)を依頼し、測定が実施できた2,410人(秋田1,018人、大阪1,392人)を分析対象とした。健診時、家庭血圧ともに高血圧の者を「持続高血圧」、家庭血圧のみで高血圧の者を「隠れ高血圧」、健診時のみ高血圧の者を「白衣高血圧」、健診時、家庭血圧ともに正常な者を「正常血圧」と4つに分類し、それぞれの頻度を算出した。 【結果】2,410人中1,016人(42%)が家庭高血圧の基準にあてはまった。家庭血圧の平均値は女性よりも男性の方が、就寝時よりも起床時の方が高く、特にこの傾向は男性においてより強くみられた。就寝時と起床時の血圧差には多量飲酒(2合以上/日)が関連していた。2,410人中、持続高血圧は442人(18%)、隠れ高血圧は601人(25%)、白衣高血圧112人(5%)、正常血圧1,255人(52%)であった。隠れ高血圧の頻度に地域差はみられなかったが、女性よりも男性に多い傾向があった。また、隠れ高血圧は肥満者により多くみられた。 【結論】地域住民において健診受診者の4分の1に隠れ高血圧がみられた。健診において正常血圧と判定された者の内、約3分の1は家庭高血圧であることから、健診での血圧評価に加えて、家庭での血圧評価が重要と考えられる。
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